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■ 昔の仲間 | 2016.12.16 |
高校を卒業した頃、浪人中でブラブラしていた時代に付き合った仲間たちと年に1〜2回、夏か冬に会合をしている。 F君という仲間内でも優しくおだやかで人望もあり顔も良い、今は64才になる男がいて、若い頃ずい分と世話になった。 泊めてもらって朝ご飯を食べさせてもらったりした。 当時まだ20代前半だと思うが結婚していて子供はなく、仲間たちはそれぞれ何らかのお世話になっていた。 それこそ人徳だというものであろう。 彼の人の呼びかけでいつも10人近くは集まる。 筆者もその例外ではなく2つ返事で参席を諾した。 熊本市の東、健軍町。 市電の最東端、終点に位置してチョットしたアーケード街があり、市内中心部とは少し離れたひとつの生活文化圏を有していて、それは人口数万人規模の「町」に匹敵するレベルである。 その狭い路地や道の一角にある小さな居酒屋でしばしの旧交を温めた。 懐かしい顔も白髪や薄毛に囲まれ深いシワが刻まれ長い年月を感じさせる。 40年以上の付き合い。 子育ての期間、長いインターバルもあったがそれらも卒業し離婚したカップルも数人いる。 二次会でこれまたそれぞれ得意の歌を唱じ、懐かしい曲を歌った。 ホンノひと時の懐旧が愛おしい。 アッという間に時が過ぎ、駐車場の愛車に乗り込んだ。 ビール一杯だけのホンノ微酔、後は水ばかりで過ごしたが、あらかじめ取ってあったホテルにタクシーで行くのも面倒臭いしモッタイナイ・・・ので車中泊をすることにした。 大きめの空のペットボトルをトイレ代わりに車中に持ち込み、コンビニで買った水と週刊誌でしばしの憩いを楽しみ、後部座席のベンチシートに横たわった。 満車だった駐車場のクルマが一台、また一台と代行運転の軽自動車を伴って出て行く。 早朝5時。 微かな朝霧に沈んだ黒い愛車を駐車場から引き出すとミニパトカーが赤色灯を明滅回転させながら2度も通り過ぎたが、酔いの欠けらもアルコールの血中濃度もゼロの我が肉体を堂々と自販機の近くに寄せて水と缶コーヒーを買って一気に飲み干した。 早朝の道路をゆったりと慎重に運転する。 深夜から朝方というのは交通事故が多いものだ。 人吉に帰ってからバスケの試合だ。 帰宅して仮眠を取らねばならない。 こんな感じでクルマと共に過ごすのが物凄く好きだ。 そうして微かな悲しみの翳りを含んだ昔の仲間達との不思議な邂逅に思いを巡らせながら夜霧と朝霧に湿った空気を突き裂いて静かに高速道路に入って一息ついた。 人生はめぐり逢いの集積で成り立っている。 近々に愛妻を失ったF君も、火事で家を失ったり、母親を亡くしたNちゃんも、離婚して家族を失ったTちゃんも・・・みんなそれぞれに深い悲しみや苦しみを心に秘めて生きて来たのだ。 そんな年輪の刻まれた「良い顔」を一人一人思い浮かべながら1時間程の帰路のドライブであった。 現実に戻ると当時の色々な出来事が古いアルバム写真のようにアタマの中で固まって、奥深い心の抽斗に静かに、そして確実に収納されてしまった。 「さあ、バスケ頑張ろうぜ」。 63才の肉体がどれだけ動くか分からない。 シュートが入ろうと入るまいと・・・パスやドリブルをミスってもこの年ならメゲルまい。 自らの心臓の鼓動や息遣いを生命のある限り・・・と実感しながらコートの上に立った・・・。 ありがとうございました M田朋玖 |