コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 感覚2016.10.25

10月下旬の羽田空港は、乳白色の薄い夕霧にスッポリと蔽われ、東京湾の波打ち際に積み上げられた低い石垣の向こうに、その滑走路の灰色の地面を白い煙幕に溶け込むように広げていた。

鹿児島空港発東京行、ANA626便ボーイング737型の機内はほぼ満席でA21の席、即ち後部の窓側に押し込められた筆者の心は強い精神安定剤の服用を要するほど追い詰められていて、羽田着陸のための降下時、悪天候による揺れが有難く感じるほど機内からの解放への期待で浮き立ち、いささか暗鬱な趣をたたえた東京の空港のたたずまいでさえもいつもの自分の心を取り戻すのに好もしい影響を与えてくれた。

いつものように東京出張は余程の魅力的な用件でもない限り憂鬱の極みにある。

飛行機という乗り物の居住性は何でこんなに悪いのであろう。
全く進化していないばかりかどちらかと言うと退化しているかのように硬く狭苦しい。
自慢のレカロ製のシートも少しもこの悪環境を緩和しない。
これは新幹線にも言えることで、グリーン車のある昔日の深々感、ゆったり感はそのスピードの進化と反比例するように先述した硬く狭くキツくなっているのが不思議な気がする。
これは新しい住宅にも言えて、そのデザインの割には安っぽく軽々で、重みというかゆったり感がない。
自動車をはじめ最近の乗り物や建物の製造コンセプトはコストパフォーマンスに集約されていて、いかに小さいコストでパフォーマンス、即ちスピードと機能性に特化されていて何かしら人間の「感覚」への配慮に欠けている気がする。

最新のボーイング社製の787に至っては座り心地はモチロン、アナウンス音ですら妙に耳障りでキンキン響く。
以前にこのコラムで書いたように人間の感覚への配慮のない物品、サービスについてはある種の優しさ、癒やし、快適感などをもっと訴求した方が良いと思える。

感性・感覚についてのウルサさが筆者の個性、特徴と思えるが、これはさまざまな街の看板から自動車、建造物、あらゆる売り物・サービスについて自らの感性を嫌らしく刺激するので自分のオフィス(診察室)も含めてもう一度この出張を機にリニューアルにチャレンジしてみたいと考えている。
この世界のあらゆる自然物、人工物において、自らの感性感覚がそれらを厳しい峻別に無意識に晒しているようで、それが心の底のある種の痛みとなって、耐えずチクチクと刺激しているように思える。

このような感覚はそれぞれに好みとして個体差があると思えるけれども、筆者の中ではそれが結構狭いというか鋭敏というか排他的というか何となく受容できないものが多いような気がする。
・・・であるのでこの日本に住んでいてその清潔さ文化についてはとても誇らしく思えるし、総じて好意好感を持つ者であるが、こと日本人のファッションとか乗り物や家の快適性については奇妙に薄っぺらくダサいと感じてしまう。
この感覚は自分だけのものであるが、これをより良く洗練させることが或る種のビジネスチャンスになるような気もする。

そのような意味では自分の職場も感性レベルで言うと20点から40点くらいでハッキリ言って落第である。
現在それを堂々とサービスとして提供しているのであるがこれは人間力でもってカバーしていると思える。
即ち職員教育とかスタッフの人々の人柄とか笑顔とか言動とか何かしら善なるものを付加させて何とか持っているのではないかと考えている。

この問題は少しずつ皆で協力して改善し「素敵」と呼べるほどのレベルにしていきたいと考えているが自分自身の素敵が実践できていないので、とにかくまだまだである。

個人的に超一流高級ホテルですら自分の感覚に、何かしらいやらし棘を刺す。
それも鋭い剣のように太くて長い棘を・・・。

この自分の感性は或る意味強みであり、弱みでもあると感じている。
強みはサービスを提供する側としての目指すレベルを上昇させる。
一方で弱みとしては自らの感覚の鋭さから自分自身の心を傷つけてストレスにしてしまいやすいという、言ってみれば「心の脆弱さ」の元凶となっているように思える。

これれの感性感覚を人間の魂の進化レベルで3段階に分けると(思考を理性、感覚を魂とザックリと分ける考え方がある)
1.すべてはOKである
2.すべてはNOである
3.すべては真にOKである
1〜3と上昇していくのであるらしいが、筆者は現在2のレベルで苦しんでいるように思える。

最近売れている若い坊さんの著書に「何事も批判的にみるな」というくだりがあるが、確かに理性ではわかるけれども・・・。
感覚や感性にはウソはつけない。「いやなものはいや」・・・
これって自分との格闘みたいですね・・・。理性と感覚の・・・。
この二つが仲良くなるとすべてがうまくいくという理論がある。
それはヴァジム・ゼランドというロシアの物理学者の説である。

ありがとうございました
M田朋久



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