コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

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■ 損得 2016. 9.22

掃除具レンタルの全国チェーン展開やドーナツ屋さんのビジネスで成功しているダスキンの経営理念に
「・・・自分に対しては損と得あらば損の道を行くこと・・・」
と謳ってある。
利益追求をその本分とするビジネス界にあってもこのように言い切る会社はそれほど多くはない。

一般に考えているよりも優良企業の多くははるかに倫理的だ。
知人が社長をしている米国の数千億円規模の会社の経営理念の第一は
「・・・神に喜ばれる仕事をしよう・・・」
というくだりがあったりしてこれまた驚かされる。
「損して得とれ」は今も昔も商人の合言葉で、江戸時代の大阪豪商・淀屋常安は現在の貨幣価値で200兆円もの資産を有していたそうだが、創始期にはこの「損して得とれ」を地で行った人である。

武家社会の貨幣経済は「米」が中心であった。
つまり米の流通を一手に握った結果、巨万の富を得たワケであるが、その始めに気候変動や飢饉の影響を強く受ける極めて不安定な米価を安定させるべく「定価」で「購入しましょう」と武家方に申し出てそれを安定させた。
つまり米価が下がった時もそれを保証します・・・というワケであるからこれもひとつの「損して得とれ」の亜型であろうか。

ついでに当時ただの淀川の中州であった中之島を只で開発しますヨとお上に具申してこれまた実現させてしまった。
この開発で大阪中之島は全国の米の集積所となり、一気に日本経済の中核をおさえてしまったと言っても過言ではない。
大したものである。
その頭脳、度胸、実行力・・・。
これらの考え方の底流に「先に損をする」という考え方があるように思う。

これは中国人の商人、即ち華僑の商売のやり方にも通じていて、彼らは或るビジネス(だいたいレストランであるのであるが)を始める時に1年間は損をしてでも客に喜ばせるそうであるので、その損を下支えするのが華僑の仲間たちであるそうな。
その団結力によって異国の地でのし上がっていくというのはイタリア人のマフィア、ユダヤ人、アイルランド人たちのスタイルで世界中共通の人間の力、パワーの源泉が「仲間」という思想であろうと思える。
その日本における結晶的組織が親分、子分、兄弟分と縦軸、横軸に構築するヤクザという団体である。別にヤクザを礼賛しているわけではないが、日本人の精神的バックボーンである「仁義」とか「侠気」については、彼らのようなアウトロー集団に純化して見られるのではないか・・・と筆者は推論するのである。ヤクザ映画がかなり隆盛した時代があったりして不思議ではないか。ヤクザのことを「極道」と呼ぶが「道を極めた人」というわけである。ヤクザ映画を観ると積極的に「損をする人」が出てきてとても感動することがある。

何をもって損とするか得とするかはその基準、価値観に依るが、考えてみれば得については多くの人々の考えの中に金銭とか利益とかが存すると思える。
投資というものも「先に損をする」という風にみえる。
自己投資というと大概、勉強とか教育とか自己啓発とかのことになるが、これでも人生で最も貴重な時間というものを大量に損をする・・・と感じる人がいるかも知れないが遊びたい、ゆっくりしたい、怠けたいと思っている人々、自らの楽しみ事だけに時間を使いたいと思っている人には損・不利益と考じられるかもしれない。

いずれにしても人生の時間に限りがある。
「黙っていても減っていく貯金のようなものが人生の時間というものである。」
自己に対して損を選択するというのは一体どういうことか深考してみるに、その対象が対人なのか、対自分なのか、対人生なのか、対世界なのか、対利益全体なのかでこの損得勘定の結果も大きく違ってくると思える。

商売の損得を極めると、商人としては「損して得とれ」という金言になるのであろう。

この言葉はあらゆる個人・団体に言えることで、以前にも述べたが「お金持ちの法則」について研究した京都大学の先生に言わせるとその特徴は「寄付をする」ことらしいので、それこそ利益としては全き「損」と思える行為も実のところ得(富)を得る最善最良の方法かも知れない。

また人生も、現世の物質的あらゆるものを捨ててあの世に行かねばならず、この世には、金銭を含めすべての物質を少しずつ捨てていくものだと、あらためて覚悟を決めて毎日の人生を送れば、相当に精神的に楽かもしれない・・・。
なかなかそんな境地にはなれないでしょうけど・・・。
人類は農耕を始めてから「ため込む」という癖がついちゃってついでに、それに派生して「争う」「盗む」「殺しあう」という癖まで備わってしまったようだ。やれやれ・・・。

ありがとうございました
M田朋久



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