コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

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■ 総合診療科 2016. 9.13

今後、認定資格のいる専門科になるそうである。
それに表立って反対しているワケではないが、何を今さらと思えるので少しくこのことに関連して書いてみたい。

NHKの番組で総合診療医Gというのがある。
再三述べているようにNHKの番組はやや偏向的でやらせが多い。何せ何でも「リハーサル」があるらしいので、この番組の出演していおられる医者同士も問答というのは基本的に「ヤラセ」ということになる。もっと言うなら視聴者を欺いているとも言える・・・誰も自覚はないと思えるが・・・。

出演する先生方もその他の民放に出るスポーツ選手のユニフォームと同じく白衣とか着せられて何だか医者がバカにされているようで個人的にはかなり嫌な気分になる番組である。

いかにもヤラセ臭いし、それなりの問答も純粋に医学ミステリー、謎解きと思うと結構興味深いが、臨床医・開業医として役に立つというワケではない。
知っておいて損はないがそれほどお得ということはない。
何故か。
それは頻度の問題だ。
そんなに珍しい病気見ることはないし、念頭に置いて患者さんを診察検査するにしても、何回かその思考プロセスを真似てみたが、結果はさんざんであった。「そんなことはないだろう」という結末ばかりであった。
大学病院でも滅多に見ないというような疾病を一般人や普通の開業医に提示されても、玄人であろうと素人であろうと戸惑うばかりではないだろうか・・・というような内容である。
そんな難しい病気を総合診療医がしょっちゅう見るかというとそういうことは決してないと断じてよい。

稀な病気というのは謎解きとして面白いかも知れないが、基本的に開業医レベルで治らなければ早々に上位の医療機関に紹介するであろうし、それが患者さんに対しても親切である。

これらのことを念頭において、即ち「急を要する疾患」を頭において診療するので滅多にマチがうことはない。

件の総合診療医Gなどという番組の素人(失礼な表現で恐縮であるが)を無用に恐れさせるだけで殆ど何の益もないと思える。

これは推測であるが政府は医療費抑制政策の一環と思える理屈はある。医学の進歩もマスコミで大々的喧伝するほど急激でも速やかでもない。一般開業医で見る疾患は今も昔もそれほどダイナミックに進化しているわけではない。このことに気付くのは臨床医として長い経験を積んでからわかることなので、仕方のないことなのかも知れない。

今の専門科を標榜する一般開業医に対して原因不明の疾患症状において総合診療科に行けば何とかなる・・・という考え方を医療関係者にも一般の人々にも浸透させて患者さんの誘導をし、同じ症状で複数の科にかかるのを抑制したい・・・という目的があるのではないかということである。

度々述べているように「症状があるから病気がある」とは限らない。
むしろ何らかの疾病を有する方が少ない。
それでも症状だけはあるという場合に総合診療科というのは便利かも知れないが落し穴はある。
何でもかんでも総合診療科・・・てな感じになるのではないかということである。

元々、大昔からホームドクター(家庭医)、GP(general physician、一般医)というのが一般開業医の診療スタイルであろうし、これは何科であろうと身に附けておかなければならないと思える。

筆者の考えでは医学教育のレベルで一般医、開業医のコースをつくって本物のジェネラリストをつくるのが良いと思うし、カリキュラムの中にスペシャリストとジェネラリストという分け方はやめて医者はやはりホームドクター的な知識を広く普く持たせる、これまでのような教育をするほうが良いのではないかと思える。

総合診療医という新たなスペシャリストをつくってしまったら専門医ですら開業したいのに一般医(ジェネラリスト)の開業だとさらに難しくなって医療の地域格差が拡がるのではないかと余計な危惧をしてしまう。

行政が国民の為になっていないのではないかという疑問を時々持つ。医師でない人々が医療行政を作っているという話も聞く。
近々の開業医の将来への微かな不安が胸中に去来する。

繰り返しになるが、一般開業医の一番大切な役目は主に2つで、
1健康管理、疾病予防
2重大救急な病気を「見逃さない」ことである。
・・・・と考えている。そのための参考症例としては結構興味深い総合診療科であるし、NHKの番組ではある。けれども何となく研修医時代、学生時代を思い出させるやりとりで、これまた気分が悪くなる。

ありがとうございました
M田朋久



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