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■ 恐欲 | 2016. 7.13 |
ご存知のように平成20年9月に起こった世界的金融危機の呼称がリーマンショックである。 これらの内幕を描いたアメリカ映画が筆者の知る限り2作品があってとても興味深い。 リーマンブラザーズの会社内部からの視点で描いた作品も面白かったがDVD新作の「マネーショート」は一連の金融危機の全体像を描いて大変勉強になった。 主人公はクリスチャン・ベール。 投資会社の変人トレーダーで金融危機の元になったモーゲージ債(住宅ローンを債務化した金融商品)について疑惑を持ち、そのバブル性に確信を持ち投資家から集めたお金を「空売り」にかけようと目論み実行する。 即ちMBS(モーゲージ債)の大暴落を見込んで“保険”(定期的な金銭の支払い)と引き換えに債務価値の下がった部分を買ってもらうという手法である。 暴落した分の金額を受け取ることができるCDS(Credit default swap)という金融商品を買うことで「空売り」と同じ利益を得る仕組みだ(難しくてようワカラン・・・)。 似たような響きの言葉にCDO(Collateralized Debt Obligation)という言葉があるが、これこそ不動産バブルの発端になった金融商品で債務担保証券のこと。 住宅価格の上昇を見込んで組まれたサブプライムローン(低所得者向け、つまり支払い能力が低く信用度の薄い人向けのローン)についてそれを証券化して売りに出すという極めて乱暴で、言い換えれば低い価値付けの商品である。 にもかかわらず格付け会社、たとえばスタンダード&プアーズやムーディーズなどもAAA(トリプルA)と評価を、投資会社リーマンブラザーズ、モルガンスタンレーなどと同じようにCDOなどの金融商品にもそれらの高い価値付けをするものだからすべての殆どの国民、政府、FRB(連邦準備銀行)、その議長であるグリーンスパン、マスコミ、みんなグルになってこの狂気狂乱の金融ゲームに参加し金儲けに邁進したのである。 それぞれが自覚なしにみんなで騙しだまされたワケであるから「赤信号みんなで渡れば怖くない」と言った米国人の心境だったのではないだろうか。 ただしこのような映画がアメリカ映画として提示されたのは興味深い。 何しろハリウッド映画にはいつもかなりのメッセージ性があって、そもそも今更なんでリーマンショック・・・と考えてみると、何らかのよろしくない魂胆でもあるように思える。 これも想像であるが、リーマンショックで一儲けした連中がいるという噂が流れ、急いでその「言い訳」をするためか、これらの事件がまた起こりますよ・・・というような、一般に向けたメッセージかも知れない。 ご存知の方も多いと思うがアメリカ映画とか大手メディアというのはユダヤ資本に握られていて常に反ナチズム、反イスラム、、親ユダヤでありこの作品でもユダヤ系投資会社(殆どの投資会社がその系列なのであるが・・・)を含め誰も悪くない・・・と言った内容の物語であった。 その上超倫理的な別の主人公の投資トレーダーはユダヤ経典タルムードの精読家で敬虔なユダヤ教徒。国家や国民のことを慮って悩みまくる・・・というシーンがいかにも「臭い」と思える。 さらに、ある程度しっかりした倫理観の持ち主たちが、強欲で無知のために市場の熱狂をよそに利益を確保するという物語であるので、これもうがって考えると、やっぱり親ユダヤ的な作為であるなあと感じる。 結論的には「仕方がなかったんだヨ」というような責任回避的言い訳、説明物語になっている。 筆者は一介の町医者であるから金融についてはズブの素人で難しい金融用語、経済用語に詳しいわけではない。 それを敢えて書いているのは、この素人的見解を、その無知さ加減を前提に表出することが、一般大衆にとって意義深いと考えたからである。 以前にも金融不祥事について書いたことがあるが、この映画でも冒頭にあった言葉にもあるように複雑で難解な取引こそ詐欺的であると断言している。 もっと言うなら複雑さこそ騙しのテクニックの特徴の最たるものであるのだ。 そうしてその複雑さ故に馬脚を現しそれらは愚者の書いたヘタな物語よりも単純でバカ臭い結末になるようだ。 また「大衆は真実を好まない」そうである。 詐欺師に騙された経験からも、自らも含め多くの人々はその楽観的見方を容易に変えようとしないし、少数の悲観論を蛇蝎のように忌み嫌うように見える。 株式投資を含め金融市場の熱狂ほどオソロシイものはないと思えるし、それらを陰で操っている人々がいると思うと一般庶民、国民の見事な騙されようはその無知によってだけではなく、純朴さと共に消費やお金儲けに対する、常態的な欲深さからも来ているという自覚が必要なのかも知れない。 奇しくも主人公の会社のオフィスに貼られていた日本語の「恐欲」という言葉。 胆に銘じたいものだ。 ありがとうございました M田朋久 |