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■ 評判 | 2016. 6.10 |
近隣の同業のクリニックのいくつかが休院・閉院に至っている。 原因はDr.の病気だそうだ。 ここ数年3軒はこのような事態であるようだ。 かなり昔のデータで申し訳ないが精神科の事故死が最も多かったそうで、就業中の危険度は精神科・心療内科の場合、結構大きいのではないかと予想される。 特に心療内科の場合「心」を扱うので、そのストレスたるや生半可なものではないと思える。 筆者の場合、守秘義務というものがあるのでスタッフを含め患者さんのことについては絶対語らないようにしているし、家族内での会話でもたとえそれが匿名であっても語らないようにしている・・・のでコラムではこと仕事についてはあまり書かないようにしている。 できるだけ当たり障りのない、他愛もない、それでいて何となく心癒やされるモノを目指し書いているつもりである。 それでも最近の心療内科医のドロップアウトは熊本地震の影響もあってか個人的には静かなトピックと思える。 筆者がストレスに強いとは決して思えない。 自分自身軽症のうつ病の気があって時々薬を服用している。 癒やされない悲しみやトラウマもいくつか抱えているし、仕事上の問題も山積している。 ストレス解消のための運動もしていないし、酒もタバコもやらず、せいぜいオートバイかカラオケである。 しかしながら自分の心の底に沈殿していく何かがドンドン堆積されていってアップアップしている・・・と感じる時もある。 「逃れられない」ストレスとあきらめて上手に付き合うという考え方もあるようで、ストレスそのものを悪と考えないで良きモノ、素晴らしきモノ、活力を与えるモノという意識を持つと逆に健康的であると唱える米国の女性学者もいる。 これは以前コラムにも書いたので割愛するが、たとえば我慢とか忍耐とかをストレスと感じないで修業とか鍛錬とかと思えば良いのではないかと思える。 開業医の場合、世間の評判とか口コミとかは大事であるけれども、これはあまり気にしないようにしている。 ・・・というか殆んど無視している。 世間の評判の為に仕事をするというのは地獄のような苦しみを自分に与えかねないので、悪評判でよいというワケではないが世間の評価など上下浮沈するものであるからいちいち気にしていたら仕事などできない。 もしかして幾人かのどちらかという評判の良い心療内科医の先生方が病に倒れたのであれば「良い先生」だったのであろう。 良い先生というのはストレスがたまりやすいとも言える。 交流分析でいうところのAC(従順な良い子)はnot OK感情、即ち良くない感情≒ストレスと捉えることができるので、どちらかというと悪評判を引き受けてそれを喜ぶくらいの気概がないと医者の仕事を全うできないのではないかと思える。 勝海舟の言葉に「現世での評価にこだわるな」というのがあって、これは結構示唆に富んでいると思える。 上記のこだわりを持つ人間は「尻の穴の小さい人間」と言い捨てている。 自分が死んで200年、300年経って、あ〜こういう人物がいて世の中に良い影響を与えていたなあ〜などと思われる人間をめざしたい。 件の先生方がどんな病を得ているか知らないけれど、心療内科を標榜するDr.が意外にストレスフルな日常を送られているかは同じ業を営む医者の端くれとして想像に難くない。 「行蔵は我に存す、毀誉は他人のもの、我に存せず・・・」 同じく勝海舟の言葉である。 世間の非難をごうごうと浴びたときの言葉である。 肝に銘じたい。 ありがとうございました M田朋久 |