コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

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■ 万年筆2016. 5.12

最近カルテを万年筆で書くようにした。
ボールペンより筆圧が軽くて済むからである。
医者になってこんなに文字を書くことが多いとは知らなかった。
毎日毎日書く、書く、書く。

先日個別指導というのがあって、これはお上(厚生局)の指導を仰ぐワケであるけれど、要するに近々ますます激しくなった医療監視の一遍(?)で行われているらしい。
・・・で、いつも必ず指導官の方から言われるのが「カルテが担保です」。
つまりカルテにキチンと所見や状態、患者さんの物語を書きなさいということである。
それも辻褄の合う医療的に正しき物語を・・・。

だからセッセとカルテを書いているのであるが、元々字を書くのが嫌いな上に文字がキタナイということもあってついついおろそかになるカルテ書き。
診察する、検査する、処置する、説明する、話すとくらべてどうしても面倒臭い。
これを楽しみに変えるべく色々考えた挙げ句「そうだ、筆記具だ」とボールペンを色々と買い漁ってみたけれど、どうしてもボールペンが、どうしてもオモシロクナイ。
それで万年筆に変えたところ滑らかな書き味と「書く」という作業がひとつの独立した喜びになるほど感触が良い。

世の中には高級万年筆というのがあって、パーカーとかモンブラン、国産だとセーラーやパイロットといずれもペン先が金で書き味の極めて滑らかな類があるけれども、これらはどこかしら「カルテ書き」にはそぐわない。
適当に抵抗があって、できれば細字で多少カリカリとした書き味がよろしい・・・と個人的には思う。

・・・ので、ネットで調べて2000円台のパイロットの鉄ペン万年筆を入手し、これで6ヶ月前からシコシコとカルテを書いている。
それもブルーブラックのインクだとますますもって気分が上がる。
・・・けれども何かしら不都合かも知れないと黒インクにGW明けから変えて使っている。
キャップをいちいち挿したり抜いたりしなければならないが、慣れて来るとどうってことはない。

カルテはひとつの公文書、何かあったら証拠書類にもなり得るので、実のところ、より慎重に書かなければならないが、イザ真面目に書くとなっても意外と難しいものだ。
内科系の内容は単純で良いが精神科系の内容は複雑で文章力もいるし何よりも書く量がちがう。
患者さんの話をおひとりおひとり丁寧に聞き、書いていくという作業は結構骨がおれる。

だからできるだけ早く見やすく正しくか書かないとイケナイ。
自然に略語も増える。
万年筆一本でこんなにシアワセな気分になれるワケであるから筆記具を含め手に触れるものの感触については少しくこだわっても良いのかも知れない。

野球選手のイチローの道具へのこだわりはコトに有名であるけれど料理家、書道家、文筆家、健筆系などなどあらゆる職業の人にとっての道具というものにその手触り、感覚、感触というものの大切さを思う時、医療器械よりもはるかに手に触れる筆記具というものに少しこだわるべきだったと或る種の後悔を込めてこれを書いている。
一時期ボールペンも鉛筆型のシンプルなものに凝ったこともあったが、これだけ書く量が増えたならばこれはもう万年筆しか無いと選んだしだいである。

黒インク用と青インク用の2種類で気分転換に、用途別に選択しているが個人的にもどうも青インクの方が気分も上がってよろしいようだ。
これは文字が目立って浮き上がって見える上に青色そのものに何らかの癒やしの効果があるらしい。

「ハガキ道」を提唱しておられる坂田道信先生も青色のボールペン、インクを勧めていられた。
ご参考までに。
ちなみに鉛筆はシャープペン1.3mmの太字の2Bを使用している。
これは書き味が極めてなめらかで折れることもなく感触がとても良い。

ありがとうございました
M田朋久



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