コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

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■ 黒い車2015.10.30

ついこの頃までクルマの運転というと面倒で少し辛かったのだが、最近はオートバイに劣らないくらい楽しくなってしまった。
60才を過ぎてのこの傾向は予想を全くしていなかったので内心とても驚いている。
何故なんだろう。

黒塗りのセダンというと官庁の公用車か送迎用の社用車、とにかくショーファードリブン(運転手つきのクルマ)を想像させる。
大学を卒業した頃にヒットした「アメリカン・ジゴロ」という米国映画があって、あのリチャード・ギアの出世作となった作品での黒色のメルセデスベンツSLに颯爽と乗り込み優雅に運転する姿に憧れて、一度はSLCというタイプのシルバーメタリックに乗ってみたが、燃費が悪く故障だらけで最悪であった。
台風の日に高速道路で宮崎方面に向かっていたら突如としてスリップしてガードレールで丸められ団子状態、即ちペシャンコになってその自動車生命を終えた。
合掌。
それでも流石ベンツやなと思ったのはそんな状態なのにエンジンは停止せず、ドアもキチンとノブを引いて開けることができ、レスキュー隊の工作車のお世話になることなく、かすり傷ひとつ負わなかったことだ。

愛車の残骸からイグニッションキーをまわしてエンジンを止めてキチンとドアを開けて高速道路のアスファルトの上に2本足で降り立った時には心からホッとしたものである。
それはさておき、トップガンというこれまた天下の大スター、トム・クルーズの大出世作となった作品でも恋人役のケリー・マクギリスの乗るポルシェ356スピードスターという、これまた黒塗りのオープンカーで、凄く映画にマッチしてカッコヨカッタあるネ。
モチロン、トム・クルーズの駆るKAWASAKI GPZ900Rよりも劣るが・・・。

最近観た映画で「はじまりのうた」という音楽映画に、やはり黒塗りのポンコツのジャガーが出て来て、作品の中で殆んど5分ごとに「出演」させてある。
映画の中ではこのクルマの乗り方、撮り方、写し方が繊細で執拗で、小粋で、楽しくてゴキゲンであったので早速DVDを購入して楽しんでいる。スト−リーも音楽もグッド。監督のジョン・カーニーさんも、まさかこの車を撮るために制作したわけではなかろうが、そう思ってもいいくらい黒いクルマが頻出する映画であった。

アメリカン・ジゴロなどでも、映画のイントロからして黒のメルセデスが主人公なんかい?みたいな撮り方で、ちなみにこの映画の中で主人公のギアさんが小粋にまとっていたジョルジオ・アルマーニもこの作品でブレークしたらしい。
今もハリウッドスター御用達みたいな高級スーツブランドに成り上がっている。

筆者のクルマも黒のレクサスであるが、これは白とかシルバーとかと結構迷ったのであるが、アメリカン・ジゴロ風に「乗りましょう」ということで黒に決めた経緯がある。
レクサスの黒は光が当たると青味がかかって濃紺に見える優れものである。
真黒でも良かったのであるけれど、今は適当にポンコツになって割りと良い風合いが醸し出されて好感である。
ガタガタと揺れるのもエンジンがガラガラと唸るのも悪くはない。

黒い車は、汚れは目立つが錆や傷は目立たない。
古くなって小傷がいっぱいあっても気にならないので、クルマを長く乗りつぶす人にはお勧めである。
シルバーはともかく、白い色は色褪せとか錆や塗装のアラが目立って古くなるとその古びた感じが貧乏くさい。
その点、黒はゴマカシがきくように思える。

この黒色の大型セダンに乗り込み、座席よりドア側に腰をずらして右肘をドア枠に乗せ、ハンドルの上部を片手で軽く握りゆっくりと都会の街路や田舎の空いた国道を流していると何かしら陶然とした気分で身も心もとろけるようになることがある。
こんな時は音楽はなしか、ジャズのバラード系が良い。
夜は黒のボンネットにネオンが映り込み、素早く流れ、万華鏡のように美しくヌメヌメと濡れたように光り、とてもロマンチック。
田舎道では時に闇に溶け込み、月を映し、街灯をキラメカせる黒いボディーが抱きしめたくなるほどなまめかしく愛おしい。

ありがとうございました
M田朋久



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