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■ 紫陽花 | 2015. 6.13 |
花言葉は「うつり気」、つまり「浮気」。 桜の花と同じように或る時期、だいたい6月の初旬になると一斉に道路わきや公園、民家の軒先などいたるところにそのふっくらと丸みを帯びた薄青色の花の房をどこかしら誇らしげに咲かせている。 明々とした季節感を示す花としてはとてもポピュラーで、それは殆んど雨に打たれてその花びらの切片がチラチラと揺れている姿がどこかなまめかしい風情をたたえている。 ほとんど気づかれないが微妙な色の変化があるそうで、それが花言葉「うつり気」の語源かも知れない。 青色というよりその名のとおり紫色なのであるけれど、筆者の目には「水色の雨」という言葉に意識が連なっていて特に田舎のだんだんと色を深めている新緑を背景に紫陽花を眺めていると心躍る夏への期待とともに微かな胸騒ぎにも似た不安感を憶える。 それは恐らく自らの嫉妬心、自他への浮気心への懸念、杞憂・・・それらの心の動揺は毎年紫陽花の咲く頃には古傷の疼きのように胸底に沸き起こってくる。 6月の朝は早い。 夏至に向かってどんどん昼が長くなる。 夕暮れも遅い。 午後8時ごろまで夕方だ。 梅雨の為に大気は湿り、酸素濃度が増え緑が少しずつ濃度を増し、悩ましくも浅い眠りは性的煩悶をさらに深めるようだ。 男女の衝突、離別、死別、思いもかけない恋愛発生などなど梅雨の雨模様に隠れているけれど人間の感情の盛り上がりがさまざまのいくらか甘味を含んだ不穏な出来事を起こすようにも思える。 個人的な統計では6月は誕生する人が最も少ない。 3月が最多で6月は最小・・・というのが30年間のデータで明らかになっており、それは約2倍である。 ・・・ということは、6月は繁殖行動の時期なのではないかと考えられる。 少なくとも出産の多い季節ではなさそうである。 紫陽花などと書くと小津安二郎の映画のタイトルにありそうであるが、これは無い。 氏の作品ではやはり「秋」が多い。 元々秋生まれだし、秋の星の人なのだ。 いつもラブホテルの看板を見ると何故か紫陽花という店名を探すが、これまたありそうでない。 夜の店、スナックには何軒か見たことがある。 個人的には紫陽花の花にはいくつもの思い出があり、いくらかの感傷を憶えるが、昔の歌で井上ひろしという歌手の「雨に咲く花」という名曲があるが雨に咲く花とは紫陽花をおいて他にない・・・と思える。 ♪およばぬこととあきらめました〜 ・・・ひと目だけでも会いたいの〜♪ ・・・ひとり泣くのよ〜むせぶのよ〜♪ 悲しい歌やネ。 叶わぬ恋をせつなく歌い上げる昭和のこの名曲も紫陽花を思い出させる。 ありがとうございました M田朋 |