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■ 伝染性うつ病 | 2015. 2. 5 |
うつ病はインフルエンザのように伝染しないし流行もない・・・ということになっているが果たしてそう言い切れるだろうか。 或る朝、突然の激しい嘔気と気分不快感で目覚め、それは未だ黎明には程遠い冬の午前4時。 重苦しい腹部全体の鈍痛を伴い「何か悪い病気」に罹ってしまったのでは・・・なんて思いながらいつもの胃腸薬と精神安定剤をガリガリと噛み飲んでとりあえず浅い眠りに入ったが仕事が始まってもこのムカツキがとれない。 早速自分で血液検査のオーダーをして腹部の超音波検査までしても何も出てこない。 ヤレヤレと胸を撫で下ろしたものの何だか体調不良が続く。 ついでに心理検査までしてみたら何と「うつ病」ではないか。 毎日患者さんを診ているからとうとううつったのか・・・なんて思いながら抗うつ薬を開始したらみるみる回復して1週間もするとそれなりに元気になった。 ありがたいことである。 そう言えば早朝に目覚めるし、体重も減るし、食欲も性欲も落ちて何だか真性のインポになったみたいで、年のせいと諦めていたものが元に戻ってまずはメデタシメデタシ、拍手〜。 やはりうつ病の薬は効く。 とりあえず好きな仕事を休まなくて良いし、体調も気分も良くなるし、未治療のうつ病の人々が巷に結構おられて最近では10%から20%くらいではないかというデータもある・・・と聞いているので啓蒙の意味でも自らの体験を書きつづってみた。 うつ病は職場における生産性を著しく落とすし、これは社会にとっても企業にとっても個人にとってもはなはだしい損失である・・・にもかかわらず上記のそれぞれに必ずしも正しい知識、情報、理解があるワケではなく友人知人、職場の上司や家族に相談して「うつ病には見えない」とか「薬は飲まない方が良い」とか「○○が良い」とか「おはらいしなさい」とか、果てはどちらかの団体の勧誘で「入信しなさい」とかとにかくハタ迷惑な助言で原因不明の身体疾患に見える「うつ病」というものが治らずに苦しんでおられる方が結構多いのには驚かされる。 あちこちの病院・医院を経由して来院される方もかなりおられて、医療機関によっては診断も治療も経験もないところがあるように思える。 著名な内科の先生で某医大の元教授なる方の「うつ病の治し方」という書物を読んでみたけれどハッキリ言って全く腑に落ちない。 ごく個人の体験談にとどまっており殆ど普遍性がない。 すなわち全く参考にならない。 食事で治る(これは信憑性あり)。 人間関係で治る(これもやや妥当)。 哲学、心理学で治る。 セミナー・研修で治る。 自己の努力で治る。 などなどいずれも全く根拠がなく、ただの妄言・妄論とまでは言わないが薬に勝るものはない。 その効果の確実性、即効性、安全性において薬の存在は有難い。 最近の抗うつ剤は殆ど依存性も、中には挙児が、即ち服用しながら子供を産むことができる(催奇形性など胎児の影響がない)ものも出ている。 また単剤主意(筆者は反対である)というのが流行っていて、薬は一種類のみというのが主流になりつつあるので患者さんの薬剤服用についての抵抗も弱くなっていると聞く。 単剤が良くて多剤が悪いという風潮が社会でも医療業でもあってにわかには首肯し難いが、まぁそれで治るのなら大変結構なことであるが色々なリスク回避、即ち単剤の当たり外れとか副作用とかを避けたいという意図があって即効性も期待して多剤を自らへも患者さんへも処方してとりあえず良果を得ている。 モチロン、ドンドン減薬していき単剤処方か最終的には断薬が目標であるのは言うまでもない。 最も問題であるのはうつ病の自覚への拒絶、治療や診断への拒否反応、うつ病による心身の不調の放置や他の薬物、たとえばアルコールや有害な食物やギャンブル、買い物、特定の人物、恋愛、SEX、宗教などへの依存、もしくは若い女性の拒食症・過食症などうつ病の典型的な疾病群の存在などうつ病にまつわる問題には結構深いものがある。 気分が悪い、落ち込む(うつ状態)であることが人生や生活や健康に良い影響を与えることはなく、その悪影響の甚大さには計り知れないものがあるので、これらの兆候を少しでも感じたらただちに治療をすることをお勧めする。 これは全く筆者の本心であって、決して有害な論ではないと信じている。 うつ病の治療の基本は ・薬 ・休養 ・教育(心理教育、カウンセリング) ・環境(入院、転居、転職、別居など) 4Kと憶えれば良い。 ついでに ・考え事をしない(5K) も追加できる。 上記のような理屈を深考すればうつ病は伝染すると考えて良いかも知れない。 社会の発するさまざまな情報、マチガッタ考え方、職場や家庭での有害な言動、人間関係、有害な食品、生活習慣やうつ病への無知、理解の無さ、過重労働、ヒマすぎるなど、うつ病の発症母地を考えるとうつ病は流行し、伝播し、伝染すると言っても過言ではないような気がする。 ありがとうございました M田朋久 |