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■ 詐病 | 2015. 1. 7 |
仮病と混同されがちであるが、より悪質である。 一時しのぎではなく、より計画的であったりする。 「経済的または社会的な利益を享受することなどを目的とし、病気であるかのように偽る詐欺行為である」・・・とWikipediaには書いてある。 サイドエフェクト(副作用)というアメリカ映画があって、この作品は詐病と精神の病、それも「うつ病」について身につまされる物語で結構シリアスである。 あらすじを書いておくとアメリカで仕事をするイギリス人の精神科医(ジュード・ロウが演じる)が自殺未遂をくり返すうつ病の女性を診ることになる。 その女性の同意の上、或る新しい抗うつ薬を処方するのであるが症状の軽減と同時に副作用が出てその為に夫を殺してしまう。 この事件はモチロン裁判になり殺人犯となったうつ病の女性(ルーニー・マーラ扮する)は一貫して薬の副作用で殺人という行為を犯したと主張をする。 マスコミにも大きく取り上げられ、件の精神科医は窮地に陥るが真相を暴くべく色々調べていると、やり手の女性精神科医(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)とうつ病女性の製薬会社の株の取引きで巨利を得ようとした悪巧みであったことが発覚する。 つまり、うつ病は詐病で殺人も薬の副作用ではなく、計画的で確たる犯意を持って行われたレッキとした犯罪だということである。 上述した映画は極端な例であるが、実際のうつ病患者さんにも詐病の方がおられると思うが難しい問題もあってなかなか追求できない。 そもそも医者は病気を疑う仕事で、警察や検事などの司法関係者とちがい人を疑う仕事ではない。 クライアントから痛い、苦しい、辛いと言われればそれを受け入れ、寄り添い解決し苦痛の緩和、癒しを目的とする職業だ。 保険金とか○○手当金とか○○年金とか○○保護とかの受領受給を意図してうつ病のフリをしている方もおられると思うがそれらを全部飲みこんで仕事をしている。 その上それらを受領するという精神状態、考え方の中にすでにうつ病的な要素があると思える。 健康で自立した個人であるならそれらを受け取るより辛くても苦しくても断固として病気や貧窮を拒むものであろう・・・と考えがちである。 けれどもこれは健康でハッピーな人々の感じ方で、多くのうつ病の患者さんにおいては身体の障害と同じく仕事をして自立して生活できるほどの精神的な力を持ち合わせていなくて、尚且つ背景に重い身体の病気や貧困を抱えている方も実際にはかなり多く、或る意味誠にお気の毒である。 これらを深く考えていくと、やはり余程悪質でなければ事情や背景を呑み込んで雅量を示すようにしている。 時々腹も立つけれど・・・。 何かしら軽く見られている感じがして・・・。 こういう問題に限らず騙されておくということをしているので何事も追求、究明などということはあまりしないようにしている。 誰にだって色々と事情はあるものだし、最終的にその個人の責任であるのだから・・・。 ついでに述べておくと詐病によって一時的に何らかの利益を得たとしてもそれらの人が幸福になったりすることは決してない・・ようだ。 多くの保険金殺人で数億円を得た等の犯人がボロ家に住み、相変わらず貧乏暮らしをしているという例は枚挙にいとまがない。 宝くじに当たった人が数年後にはさらに貧しくなってしまったとか、とにかくあぶく銭とか悪銭は決して身に付かないようになっているのだ。 そうして何度も述べるように医者の仕事はそれらの人々を懲らしめたり裁いたり、という役割を持っているワケではなく、善人も悪人も正しき人も不正な人も敵も味方も平等に診ていくのが筋であろうと思える。 世の中の公序良俗を乱さない限りにおいて・・・。 ありがとうございました M田 朋久 |