[戻る] |
■ 海馬 | 2014. 2. 1 |
お気づきの方は少ないと思うが、今年(平成26年)からしばらくはあいうえお順、つまり50音順(本当は46音順らしいが)にタイトルを決めて書いている。 筆者におけるコラム書きの大要点とは第一にタイトルの決定であり、第二は書き上げるという根気であるので、50音順と決めてしまえばこの2大要件を満たしやすいし「まずは書く」という作業に取り組みやすい。 今回は海馬。 タツノオトシゴのことらしいけれど脳の解剖では深部にあり大脳辺縁系に属する。 その主な働きは新しい記憶を司ることで、情動を司る扁桃核と連携し合って食欲、性欲や快、不快、怒りや不安などの常道、学習と記憶に関係するすべての感覚(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚、振動覚)の受容器から入った情報はこの大脳辺縁系(海馬、扁桃核など)を通過している。 ちなみに古い記憶は大脳皮質にファイルされるらしい。 また海馬には記憶の整理整頓にも関係しているとのことだ。 話しはムツカシクなってきましたが、これは医学用語に馴染みがないというのと脳の構造と機能が空間として認識しにくく、またその働きも極めて複雑で多機能であることに起因している。 アルツハイマー病の増加が近年話題になっている。 NHKの特集ではその予防法、治療法への取り組みが報じられた。 ことに海馬についての研究は歴史的にも長く、アルツハイマーと認知症の中心的また初発的な短期記憶(新しい記憶)の障害に着目するのは当然と思える。 空間学習能力に関わる脳の器官であることから国立長寿医療研究センターの運動と計算を組み合わせた予防プログラムが披露してあって「運動は絶対にした方が良い」と担当の医師が断言しておられたがこれは少し違うなぁと思ったのでここに記している。 運動が悪いと言っているのではなくもっと大事なことがあるのではないか・・・と言いたいのである。 明治生まれの筆者の母方の祖父は90才まで健康に生き、脳梗塞で急死したが死ぬまでアルツハイマーの徴候など全く無くどちらかと言うと若い人達に適切な助言を与えることのできる智者賢者であった。 またアメリカ人の友人でレオンという人物は80才代後年にこれまた前立腺癌で亡くなるまでこれまた極めて元気な脳を持っていた。 父方の祖父も遺伝性の病気で寝たきりであったが頭脳は極めて明晰であった。 父方の祖母も同じく心臓病で76才で急死したが同様であり母方の祖母のみが最期は明らかな認知症で亡くなった。 これらの血縁や友人と数多くの患者さんの観察から浮かび上がるアルツハイマー病の病因についての筆者の推論は運動よりも食事である・・・と断言して良いと思える。 何故か。 上記の人々に運動家は一人もおらず、かのキンさんギンさん、120才以上の超長寿者 ・泉重千代さんが熱心な運動家であったとは聞いたことがないからである。 脳全体の中でも海馬はストレスや虚血に対して脆弱で極めて繊細な器官であることだ。 強い恐怖やストレス後の心的外傷後症候群、所謂PTSDにおける海馬の変化(萎縮)についても良く研究されていて有名である。 ミルタザピンという抗うつ剤は海馬の委縮を改善するというデータの発表もあって筆者の質問に演者もキッチリと即答されたくらいであるから或る種の抗うつ剤も海馬の健康に良い影響があると考えられる抗うつ剤の治療によりあきらかな認知症の改善が見られたという例は筆者の症例では数限りなくある。 件のNHKの番組でも海馬を元気にしよう・・・みたいな考え方で、先述した医療センターの予防の取り組みとなって、結果として成果を得たと報じてあったワケである。 筆者の着目点は海馬の虚血、即ち血流障害への弱さであり、イコール酸素不足に対する脆弱さである。 肉体の組織はすべて血液の流れによって、もっと言うなら赤血球に載せて運ばれる酸素に栄養されている・・・とうことは、より潤沢に酸素を各器官・臓器に送り届けるために赤血球の通りを良くすれば良いワケで、結論的に血流障害の改善が最も早い海馬元気の妙薬と思える。 その為に最も大事な要件とは食生活の変容であろうと考えている。 実際に1992年から2012年の20年間に日本人の65才以上のアルツハイマー病の増加はなんと6倍だそうで、この原因についての第一は運動不足などではなく食生活の変化であり、その食生活の内容というのが血流障害を促進する物質の大量摂取によると思われる。 具体的には食事の欧米化で、一言で表現するなら家畜の肉の摂取であり乳製品の増加であろうと考えられる。 栄養学的には血流障害を惹き起こす食物の成分は牛とか豚の脂肪とコーン油や紅花油の脂質で、これらは赤血球のスラッジ現象(ベタベタとくっつき合った状態)を生じせしめ、このような状態の赤血球では毛細血管を赤血球が通り抜けることが出来ず結果的に組織の虚血、酸素不足が起こってしまう。 結果、脳の変性や海馬の委縮が起こる・・・と推論できる・・・と考えている。 その他食生活の欧米化は糖代謝異常(糖尿病)、多血症(赤血球の肥大化)なども起こり、脳にも心臓にも他の多くの臓器にも良いワケはない。 実際に筆者のインタビューでも多くの認知症の患者さんにおいては「何でも食べる」という方が多いが、筆者の見解では人間は何でも食べてはイケナイのであって、カラダ、特に脳の為に良い食物だけを食すべきであり、それはDHA・EPAの多く含まれる青魚であり納豆であり玄米などである。 発明王のトーマス・エジソンは鰯ばかり食べていたらしいし、近頃85才で都知事選に出馬した中松義郎氏は肉を食べないそうで、1日1食だそうである。 キンさんギンさんの好物も刺身(魚)だったそうである。 これらの事柄(食生活)について言及しないのは食品メーカーや製薬メーカーへの配慮であろうと思える。 これは莫大な規模の産業で製薬メーカーにいたってはアルツハイマーを含めて病気の増加は自らの商売にとっては好もしい状況である・・・という見方はそれ程不見識であるとは思えない。 その他の発病要因は睡眠不足、運動不足、うつ状態などだ。 全体としてみれば人間の心身に対するストレス状態が病状に良くないのも結果的に血流の障害を惹き起こすからではないかと考えられる。 確かに運動がストレス解消の一番の妙手であり、空間認識能力の開発に効果があるとは思えるけれども、某医療センターのドクターのように絶対にした方が良いとは筆者は思わない。 いかがであろうか。 ありがとうございました M田朋久 |