コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 半沢直樹2013. 9.12

TBSの高視聴率番組。この軽い社会現象に近い人気の秘密について少し分析してみたい。
主人公の名前をそのままタイトルにしているところが目新しいが、筆者の分析では、これは水戸黄門のコンセプトと同じではないかと思える。

黄門様は実在の人物で江戸時代。
一方、半沢さんは架空の人物で現代のメガバンクの銀行員。
言うならば、日本人の平均的サラリーマンの代表である。

一番の共通点は最後に必ず主人公のタンカ、見栄を切るところを見れるところが安心して視聴できる・・・というか、それを見てスカッとしたいが為に人々はチャンネルを合わせているのではないだろうか。

日曜日の午後9時。
多くのサラリーマンは恐らく明日からの仕事を思い、幾分憂鬱になっている。
そこに仕事そのものの困難、嫌な上司や、理不尽な不正に真正面から挑んでいく主人公、半沢直樹の姿に重ね合わせ、カタルシスを味わっているのだ。

「これが目に入らぬか」黄門様。
「やられたらやり返す、倍返しだ」半沢。

前者は高い身分を示す印籠。
後者は知恵や度胸、友情、チームワーク、リーダーシップ、貴重な情報等々、現代のビジネスマンの武器となる資源を最大限駆使して戦う。
その武器の前でひれ伏す悪人共、即ちここでは不正な取引の誘惑に負けてしまった中小企業の経営者であり、経理担当であり、お役人であり、背徳的で無能な上司であり、最悪は銀行内部の裏切り者幹部社員、役員である。

現代のサラリーマンと中小企業経営者の敵が、みな勢揃いした感がある。
これらを見事にバッサリと言葉でやっつける主人公の姿が痛快でないワケがない。

外資系金融機関でしか働いたことがなく、欧米の研究機関で博士号を取得したとされる金融家(?)の藤沢数希氏(この名前は主人公によく似ている)の言で「何が面白いかワカラナイ」「銀行マンが収益の為に働いていない」とあったが、この感性こそ我々純朴で真面目な日本人の敵なのである。
ゴールドマン・サックスとか、モルガン・スタンレーとかの巨大投資銀行の投資家ですら創業当時は人を大事にし、人と会い、人を見て人のために投資をしてきたそうである。
世界一の投資長者「オマハの賢人」ウォーレン・バフェットですら、そのようなニュアンスのことを述べている。
金融マンでも、今はトレーダーとバンカーに分かれ、トレーダーとはネットの画面だけを見ながら瞬間瞬間の取引きをし、利ザヤを稼ぐことをやっていて、これらの作業だけで巨万の富を得ている人も多いと聞く。

一方、所謂バンカーと呼ばれる人々は、それこそ人を見て投資、融資をする。人に会うこと、人を評価することが仕事の中心となり、数字やデータはそれを裏付ける為に、稟議を通すためにある・・・と言っても過言ではないだろう。

そもそも銀行を中心とした現代の経済活動の主目的は、ともすると利益追求だけに意識がに向けられがちであるが、本質的には人を幸福にする為にあるのではないだろうか。
「強欲資本主義」という言葉もあって、お金の為なら何でもして良いという風潮があるようで、それらに毒された人々は強欲であることを恥じることなく熱病にうなされたようにお金の増減を示すいくつものコンピュータにディスプレイされた数字をグラフと一日中対面し、それらを観察・操作することを「仕事」と称して、自らは一生懸命働いているから莫大な収入はもっと増やすべき、守るべきと税金の安い国に移住するということもやってのける。

この金融自由化とグローバル経済は多くの金融長者を生みだしている。
自分たちの収益を同国内で働いていない人に税金を払って分配するのがイヤだとおっしゃるのである。
このような「自分の利益のことしか考えない」という思想に基づいた経済活動をどんどんしましょう・・・というのが強欲資本主義と呼ぶのかどうか定かではないが、少なくとも社会とか国家とか世界平和とか貧困の問題には考えを及ぼしていないようで、物凄くオゲレツで低俗に思えるが。多くの人々の感覚はせいぜいその富とぜいたくな暮らしぶりへの羨望とか嫉妬とかを何とはない違和感、不公平感とかが存するのではないだろうか。

そもそも真の成功者とは、富を蓄積し、それを贅沢な暮らしで使う人々ではない。多くの人々の幸福や豊かさに貢献するこに喜びを感じ、自らの人生が世の中に永く良い影響を及ぼしつづけることを最善とする・・・とのことだ。

いずれにしても半沢直樹は大衆に受け入れられ、元気と勇気と爽快感を与え、日曜の夜を楽しくさせてくれる有難い番組となっている。

先述したように、時代劇の「水戸黄門」「遠山の金さん」「大岡越前」などなど、物語がおそろしくワンパターンであるものの、ラストシーンには必ず悪人共をやっつけるタンカと見栄を切る場面を見られるという安心感を視聴者に与えてくれ、貯まった溜飲が下せるという勧善懲悪的ストーリー、つまり悪人と善人が正義と不正義が明瞭に分けられ、最後には正義や善が勝ち、悪を懲らしめるという物語は普遍的に一般大衆の好むところなのである。

そのことをあらためて証明してくれた番組であり、現代の社会にとって悪と言うものがどのような存在であるかをそれとなく示してくれている。
銀行と銀行員の使命とは?その本能と特質、社会との関わりについて勉強にもなる。やや非現実的とは言えそれほど荒唐無稽とも思えないところが怖くもあるしユーモラスでもある。

銀行家だけでなく、多くのビジネスマンや経営者、何よりも為政者に観て欲しいものだ。一般庶民からするとさまざまな規制や手続きやルールが商売ビジネスの邪魔をしていることに気付いて貰いたいものだ。勿論、悪用して儲けている人をも生み出していることを。

それにしても主演の堺雅人と香川照之は名コンビ。その存在感と演技力は凄い。半沢の妻「花」役の上戸綾もなかなかいい。夫を叱ったり励ましたり、巧みにに刺激してエネルギーを与えあげまん妻を演じ、花をそえている。
キャスティングの妙は映画やテレビ番組だけではなく、人生にとっても最重要のエンターテイメントファクター。その面白さの構成要素の最大でもあるようだ。おめでとう。

ありがとうございました
M田朋久



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