コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

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■ 「医者に殺されない・・・」のウソ2013. 6.28

近藤誠という有名なお医者様の書いた本で、70万部も売れているそうである。
このような「キワモノ」系、煽動型の本はよく売れるようだ。
極端で奇異なモノ言いというのはマスコミで物凄く受ける。
目新しくて新鮮で「楽」だからである。
「ガンを放置しろ」というのは一般庶民、とりわけ貧しい人達、キチンとした知識の無い人々にはとても楽だ。
とりあえず病院に行くというのは結構面倒臭いものなのだ。
筆者は医者であるが、そのような病気へのスタンス、心構えはよく理解できるし多分に誘惑的でもある。
全面的に反対というワケではないガンに対しての現代医療の取り組みに多少の誤りがあるのは事実なのであろうし、それが幾分真実を含んでいるのも何となく腑に落ちる。

しかし山のような嘘も書いてあって、これはハッキリと反論しておきたい。
人々の健康な人生の為に・・・。
確かに医療を食い物にしている・・・というより、そこから多額の利益を得ている人々や会社がって、それとは知らず、或いは良かれと思って「医療行為」をなさっている多くの善良なお医者様や研究者の方もおられて大変な顰蹙モノの本であるものの、半分以上はインチキではないが、或る意味、経験不足と無知と独りよがりが著者のアタマ中に渦巻いていて、多くの良識ある人々、たとえば高い見識のある日本医師会とかマジメなドクターには完全に無視されている本でもある。

そもそも人間の健康を維持し、豊かな人生を享受する為に医療というものが存在しているのであるが、まるで全面否定のような文章は「何も知らんくせに・・・」と反論したくなるのは当然であろう。
著者は放射線科の医者で、ガン患者を多く見て来られたようで筆者のように内科系ではなく、外科系のドクターである。
ガンというのは主に外科で治療するので、筆者とは少し視点が異なる。

いくらか内科医と外科医の戦いのように受け取られても良いが、一般的に外科系の医者は単細胞で思考が直線的で単純である。
またそれを好む傾向がある。
物事の複雑さ、中庸とか曖昧さを受容できないのだ。
結果、言葉や思考が断定的、一方的、直眼的になりやすい。
「・・・とは限らない」を認容できないとも言える。

このような本を書いてしまって、自分が何かしら悪性の病気になってしまった時にどのような対応をなさるか見ものである。
筆者の予想では、自らの著書にあるような行動はなさらず、さまざまな医療機関・病院を調べて受診し、精神的にもがき苦しみながら病悩されるのではないか・・・と見ている。

ともかく著書のウソをいくつか検証してみたい。

@『とりあえず病院へ・・・』
悪いアイデアではない。
心配してしょっちゅう行くことはないが、車だって車検があり定期点検がある。
時々は自分の肉体への関心を持つことは必ずしも悪いことではないと思える。
ただし、検査結果とか医者の話を盲信してはイケナイ。
これは著者と同感である。
A『「老化現象ですよ」という医者は信用できる』
そんなことはない。
ある意味、治療放棄である。
老化と片づける医者こそ信用してはイケナイ。
患者さんからしたら身も蓋も無い暴言とも言える。
確かに「老化」と聞くと安心する側面もある
けれどもアンチエイジングとか延命とかは健康医療のめざすのは、よくよく考えると正しい方向であるのだ。
いずれにしても深考しなければならないテーマである。
B『医者に行く人ほど早死にする』
そんなことは絶対にない。
早死にした友人は病院に行かなかった連中ばかりだ。
良いかかりつけ医の正しい知識・情報提供や助言ほどありがたいものはない。
「病院」と「良いかかりつけ医」を混同しない方が良い。
現実的に、単純に「病院」をデパートや何かと同じように利用すると著者のような事が起こるかも知れないけれど・・・。
C『「血圧130で病気」なんてありえない』
これはそうかも知れないと思える。
高血圧、高脂血症が短命や疾病発症のあきらかな確証はない。
元気で100才近くまで生きられた、血圧200〜110で肥満した方もおられた。
D『血糖症は薬で下げても無意味で、副作用がひどい』
そんなことは内科医として述べると「断じてありえない」と言って良い。
正しい食事療法と少量の薬物は快適な健康人生を約束する。
高血糖は断じて放置しておくべきではない。
重い視力障害、透析を要するような腎障害や種々の癌発生の温床になる。
E『早期発見は実はラッキーではない』
これも乱暴な言い方だ。
早期発見で助かった胃がん、肺がんの方も数多く見ているし、また逆のケースもいっぱい経験している。
難治の胃潰瘍がくどくどしい精査で早期癌だったこともあり、この方は現在も手術治療によってお元気だ。
F『医者の健康指導は心臓病を招く』
これは指導する医者の知識レベルの問題で、確かに一般の医者向けの指導法にはマチガイが多い。
この言葉の真偽は半々だ。
G『一度に3種以上薬を出す医者を信用するな』
「嘘つけ」と言いたい。
筆者は心療内科であるが、処方薬の種類や量が少ないと無効であったり、逆効果だったり、強烈な依存をつくったりするので、この発言にはアタマにくる。
先日も肺の末期癌でうつ病になられた女性がおられて、某専門病院(心の病院)で眠剤だけ処方されて落ち込んでおられたが、当科の多剤併用処方で見事にお元気になられ、家族全員の方に喜ばれている。
このような例はゴマンとあるので当科スタッフに尋ねられたらよろしい。
ただし専門でない抗癌剤等については不明に不知であるけれど・・・。
H軽い風邪で抗生物質を出す医者を信用するな』
これも殆んど臨床経験の無い医者の言葉だ。
他院、特に大学病院など一般感冒剤、たとえばPL顆粒とかだけ処方されて治癒せず、筆者の抗生剤投与によって一発で治った例は山のようにある。
これも非現実的、非臨床的、経験の浅い医者の文言である。
Iその他がん検診、免疫療法については著者の経験に基づいた持論が色々と書いてあるが、これについて、筆者は癌を専門に診ていないのでコメントしないでおこう。
・・・けれどもこれだけは言える。
一般のドクターも真面目に一生懸命患者さんの為に仕事をしているのだ。
このような「本」も是非盲信しないで欲しい。
モチロン一般の病院の先生の話も、盲信してはイケナイ。

じゃあ、どうすれば良いか。
巷にあふれる健康情報、医療情報をこの本を含めて鵜呑みにせず、本当に経験のある、物事を多面的に深考できる、慎重で、親切で、優しいかかりつけ医か、医者の友人を見つけ相談し、話し合いながら自分の健康とか人生について検討していくことだ。
絶えず検証しながら・・・。
或る意味、これが一番至難かも知れない。
この本み書いてあることは著者のオピニオン、考え方として捉え参考になさればよろしかろうと思える。
繰り返しになるが、このコラムも単なるヨタ話ではなく、世の中の為、人々の健康の為に書いている。
これは筆者の考え方でもあり、スタッフ全員と共有している理念コンセプトでもある。
参照参考深考までに。

ありがとうございました
M田朋久



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