コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 嘘と言訳2013. 6.12

自己啓発セミナー、ビジネスセミナー等に参加すると、この言訳を頭から否定される。
即ち、言訳と成果を厳格に対比させて、成果を出す為には言訳を自他に許してはイケナイということである。

確かに物事の良果、仕事や勉強の成果を得るのにできない言訳をゆるすと、それに嘘も交えると無限に生じさせる「出来ない言い訳」が生まれ出来ない結果が生じるようだ。
これは理屈として物凄く理にかなっていることである。
・・・けれども、犯罪者を対象にカウンセリングや教育指導に携わっている方によると、犯罪者の人々の幼少期には「言訳」をゆるされなかったという生い立ちがあるとのことであった。

子供が言訳や嘘を言い、それをある程度受容するというのは親の態度として絶対的に必要なことなのかも知れない。
何故ならば、一般社会や学校などの組織というところに属することは、基本的に言訳はゆるされない状態、環境におかれるということだからだ。

安心して嘘や言訳を言えるのは、深い愛情と強い絆、信頼関係がそこに存在するという証でもあるのだ。

幸いにして筆者は犯罪者にはならなかったが、一時期グレて非行少年、暴走族になりヤクザの一歩手前くらいまで身を落としたことがあるが、その当時は学校も親も学業成績の成功失敗だけを要求し、こちらの言い分、即ち言訳をゆるしてもらえなかった頃に同期しているように思える。

少年時代に親は大変な子煩悩ではあるものの、激しい夫婦関係の騒乱で子供のことどころではなかったようで、これが幸いしたのか筆者自身の少年時代は嘘をつきまくって映画を観に行ったり、川に遊びに行ったり、塾に行くとか言って夜遅くまで遊びまくったりしていたが、これは時に親に激しく責められたりすることもあったけれども、概ね我が親は知ってか知らずか、目こぼし、穴だらけでまんまと学業以外の遊興事にふけって学校をさぼって街をウロついたり、山森に入って秘密の棲み家をつくったり、夜に懐中電灯を照らして魚を獲る「夜掘り」という漁をしたり、町の本屋さんにエロ本を買いに行ったり、とにかく子供らしい好奇心を思い切り自由にとまではいかなくても、それなりに楽しめたのは、この親に対する嘘と言訳のお陰であった・・・と今は思える。

筆者の父親は軍人あがりで、スパルタ教育の信奉者で軍国主義者、母親は強烈なヒステリーで激情家。
正直に自分の行動を述べた時には、殆んどマチガイなく有無を言わさぬ鉄拳が飛び、母親には筆者に言わせると「拷問」とも呼べる折檻を与えられたので、桜の木を切ったワシントン少年のように優雅な正直少年でいるワケにもいかず、不承不承自己を守る為に立派なウソツキ少年になったのではないかと推察している。

中学からの寮生活も似たようなもので、自由を得る為には嘘を使わなければならず、学校をさぼりたくて体温計を擦って仮病を演じた時には、一日中寮監が傍に座り寝かせられて閉口したので「これでは学校の方がマシ」と二度と仮病は使わなくなった。
高3の時に寮を出て、下宿生活を始めてからは成績が急降下爆撃機のように見事に急落。
優等クラスからいきなり劣等生になってしまった。以来すべてがどうでも良くなって、学校をさぼって制服のままバイクで街に出て、タバコを吸いながら一人で映画を観るという快楽を得てしまい、これは筆者に麻酔的ヨロコビを与えてくれ、度々実行した。
雨の日も風の日も・・・。

結果、学校に行くといつもいつ職員室に呼ばれ、何らかの処分を言い渡されるのではないかとビクビクしていたが「恐れることは実現する」の理論どおり、とうとうめでたく退学となってしまった。

というわけで、子供に人間としての正直さを「涵養」させるには、大人や上長者の多少の言い訳とか嘘についての「寛容」さが必須なのではないだろうか。
これは「シャレ」ではなく、心から信じている理屈だ。

筆者の4人の子供は寮生活を強いた娘以外、皆正直すぎるくらい正直だそれは母親が嘘を嫌うということと同時に父親(筆者)の言訳や嘘への寛容さにあったのではないだろうか。

「子供を責める」ことは一切しなかったが、母親の厳しいしつけと相まって、今のところマトモに育っているように見える。

大人社会においても言訳というのは割と重要で、たとえば重要な会議や大事な約束を守れなかった時に何らかの言訳を言ってもらわないとお互いに気マズイことになる。
言訳など基本的に嘘八百であろうと、正直なものであろうと、社会人としては「結果が出ない」ワケであるので、通用しないものであるけれども、一つの社交の技術として身につけておかねばならない「たしなみ」みたいなものでもあるのだ。

「嘘つきはドロボーの始まり」。
これも正しい。
しかしながら「言訳は犯罪者にならない為の潤滑油」くらいの知恵・知識は、多くの親や教育関係者に広くアナウンスしてもよかろうと思える。

ありがとうございました
M田朋久



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