コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 誕生日に思うこと2012.12.15

平成24年12月3日。
筆者の満59才の誕生日。
急に思い立って夜半、午後9時頃独りで馴染みの小料理屋の暖簾をくぐった。

「一人誕生日会」。
だいたい飲食は一人でするのが好きなのだが、この「お一人様」の傾向は日本人が世界一だそうで、今の日本で特段奇異なことではないらしい。

めずらしく熱カンの日本酒を盃であおりながら、魚とかおでんとかお店のお任せで創ってもらってつまんだ。
ビールと日本酒を交互に飲んだせいか久々に酔いがまわり、これまた馴染みのスナックに行って歌を歌った。
酒を飲んで酔う。
話しは諄くなるし、涙は出るし、感傷的になるし何だかロクなことは無い。
翌朝の気分も最悪である。
早朝に動悸はするし、抑うつ気分になってネガティブなことばかり考えるし、この日を機に50代最後の1年を酒なしで過ごそうと決意した。
以来、アルコール類は一切口にしていないので、気分はスコブル良い。
元々アルコールは自分の体質に合わないのではないか・・・と思える。
タバコも好きだが咳が出る。
酒・タバコはこの際キッパリとあきらめた。
快適な人生にとってその有害性を実感した・・・というより、それなしの快適感を知ってしまったという感覚である。

今日12月12日は世界的映画監督、小津安二郎の誕生日であり命日でもある。

小津映画では定番の飲食シーン。
小奇麗な小料理屋で、ネクタイにスーツ姿の紳士たちが酒を飲みながら談笑する場面が、例のローアングルの画像で、平凡な設定ながら非凡な独特の映像美を創出してくれている。
こういう場面を見せられると「酒を飲みたくなる」が、このような習慣のある人で酒に弱い人は長生きしないようだ。

小津安二郎も60才の還暦に悪性の病を患って亡くなった。
今年、平成24年12月10には筆者の開業時代、即ち20代の頃から懇意にしていた先輩ドクターが68才で亡くなった。
いかにも壮健で丈夫そうな方だったので、この唐突な発病と死は予想していなかったが、酒毒と煙毒、夜遊びの結果と思える。
何しろ名実共に一時期「夜の帝王」であられたのだ。

母親がその先生の余りの豪快さ、酒の強さ、壮健さに筆者の身を案じ「付き合うな」と命じたほどである。

以前も書いたように酒・タバコよりバイク・クルマが趣味なので、それ程の苦は無い。
音楽を聞きながら中古の国産スポーツカーに揺られ、街や海や山をめざし、高速を飛ばしていると、もうそれだけで深い快楽を得られる。
ありがたいことだ。

話しは変わるが、小津安二郎の映像は画家の東山魁夷にも激賞されたくらい端正で美しく、映画の物語性よりも映像そのものに魅せられてしまう。
今年のNHK大河ドラマ「平清盛」が史上最低の視聴率を更新するという不名誉な結果になったが、映像美についてなら或る意味当然であろう。

お茶の間で、それも食事時間にかかる時間帯でキタナイモノは見たくないのだ。

人は皆、美しいモノを見たいのではないだろうか。
美しい人、美しい行為、美しい言葉づかい、美しい物語、美しい所作、美しい心などなど。

小津監督の美しさへのこだわりこそ、NHK大河ドラマで見倣うべきではないだろうか。

昔の映画のあざやかな色彩とエレガントで上品なファッション、美しい会話は何度見ても飽きない。

最近は何でもかんでもキタナイ。
人は醜い心、醜い言葉、醜い衣装、醜い行為、醜い事件、醜いマナー、醜い映像に世界中馴れきっているのであろうか。
「醜いモノは『見にくい』のだ」

このことを映画制作者に限らず、全ての人間たちに強くメッセージしておきたい。

特に美しい心、美しい魂を映像に表現できるなら多少の汚さも許されるかも知れないが、そんな洞察のできる人はそれ程多くない・・・ような気がする。

人はまず見た目から入るのだ。

ありがとうございました
M田朋久


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