コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

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■ 女たちの都2012.12.14

女たちの都
熊本県の牛深町の町おこしを目的に制作された映画のタイトルである。
サブタイトルが「わっげんおっげん」となっていて、直訳すると「あなたの家、私の家」と言う意味で、多分我々とか私たちとかの意味になるのであろうか。
知人の紹介でイヤイヤ無理矢理観に行ったのであるが、あにはからんや結構面白かった。

少なくとも鑑賞後に元気が出るし、気分がスカッとする。
会話が軽妙で、わが熊本県の方言も小気味よくユーモラスで全く退屈しない。
秀作であると思える。

物語は大竹しのぶ扮する女リーダーの下、自分たちで「どぎゃんかせんば(何とかしなければ)」みたいな志で、全国一の衰退地と烙印を押された郷土の街を活性化すべく「女たち」が立ち上がって活動、奮闘するというもので、酒ばかり飲んで口ばかりの、だらしのない男たちや行政(町役場)を尻目に「色町」再生で町を元気にして、子供を故郷に帰そうという隠された主人公の意図もあったりして、同じ熊本県人の男として不甲斐ないやら、力が抜けて楽になるやらとにかく笑いと涙と感動の1時間40分であった。

かつて天才と評されていたベテラン女優「大竹しのぶ」はさすがにウマい。
ホンモノの「天草女」に見えるから大したものである。
方言もサマになっていて自然だし、天草地方の女性のおおらかで開けっぴろげ、言いたいことはハッキリと言うなどの気質をのびやかに演じ切り、見ていて痛快であった。
同じ熊本県内でも天草の女性の気質は一種独特であるようだ。港町気質、海賊気質、漁師気質。

我が町、人吉市には殆んど棲息しない人々であるように見える。

牛深町は天草郡島の最南端にある風光明媚な漁師町である。
青々とした海の美しさは絶景。
NHKの連続ドラマ「藍より青く」の舞台にもなったくらい、深い群青の紺碧の海には誰もが魅了される筈だ。

暖流の影響か、海は澄みわたって温かく、心癒される。
戦前の瀬戸内海は世界有数の工業商業地帯の発展の為にその美しさを減じたが、今や日本で最も美しい小島の海は天草のそれではないだろうか。

エーゲ海とまではいかなくてもハワイや沖縄よりはるかに好もしい。
島と島とをつなぐ橋は天草五橋として数十年前に完成したが、小さな島々との往来には「海のタクシー」漁船用の小型船舶が活躍している。これに夜に乗ると満天の星々と島々の遠景にともる町の灯がチラチラと水平線上にさんざめき、波の音とディーゼルエンジンの轟音とが夜空に奏でられ、とてもロマンチックな気分に浸ることができる。

とにかく「日本一のさびれた町」にしておくにはモッタイナイくらい良いところである。
美しい海浜と漁港、小さな商店街、新鮮な魚・・・と元気な女性たち。
確かにいきなり色町とはいかなくても飲食店が賑わっていて、夜の街路に灯りがあれば、ロンドンの次に住んでみたい町が牛深町である。

詳細は不知であるが、この映画制作にたずさわった人々もその中心は女性だそうで、知人の独身女性で保育園の園長さん。映画の中でも大竹しのぶの母親の若い芸伎時代を演じて、アップで映っておられたくらい美しい人だ。

日本中の地方の町々で起こっている過疎化、高齢化、少子化、不景気、子供の教育など重いテーマが盛りだくさん。
それを明るく、楽しく描いてあって、何とも言えず良い映画であった。

当地人吉は盆地。
山の中で人々は人の噂話ばかり。
牛深は港町。
海を見て育った人はやっぱり何とも言えず明るく、開放的でサッパリとしている。
どちらが良いかは言えないが、日本人の源流山か海かと問われたらやはり海ではないだろうか・・・と思う。

海神ペネロープではないけれど、天照大御神も女性であるし、邪馬台国の王も卑弥呼と言う女性であったらしい日本の国技中の国技「相撲」の土俵には女性が登れない。相撲は神事。神様は女性であるので嫉妬するから・・・とのこと。
その上、国と言うのは母国というくらいで、世界中で女性名詞。
国を元気にするのも衰退させるのも女性であるなら、今はまさにあらゆる分野で日本を元気にするのは女性なのかも知れない。
形式的で硬直的。理屈と体面。世間体、義理と付き合い・・男の世界のマイナス面への痛烈批判とも受け取れる映画であった。
拍手喝采!実際に地元劇場で起こったらしい。
日本中で見て欲しい映画だ。

ありがとうございました
M田朋久


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