コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

[戻る]
■ 新型うつ病2012. 5. 5

先日のNHKの特別番組のタイトルが「職場を襲う新型うつ病」というもので、これにいつものようにまたブチ切れてしまってこれを書いている。

だいたい、この「新型・・・」という言葉で、いかに多くの日本人が、何度だまされてきたか考えると分かりやすい。
そもそも「新型」と言ってくくってしまえば、思考停止になってみんな気楽である。
そうして取り組みが甘くなる傾向が生じる。

先年から起こった「新型インフルエンザ騒動」が、まさにそれである。
「泰山鳴動して鼠一匹出でず」
そのようなものの流行など、実際には全く起こらなかった。
少なくともデータ上は、インフルエンザ流行については通年どおりであった。
お金儲けを企む、抗ウィルス剤タミフルのロシュという製薬メーカーをいたく儲けさせただけでなく、マスコミを使って人を煽動してこれを仕組んだ男が現に存在するらしい。
今は名前を忘れたが後記したい。

今では、このインフルエンザの話は急にカゲをひそめたようだ。

ところで、この「新型うつ病」もまた、モチロン医学上も保険上も認定されておらず、分類もされてもいない。
治療法も確立されていないが、その名前を付けたくなるようなうつ病のグループは確かにはある。
この難治性の「うつ病」の特徴を列記する。
・若い男女に多い
・薬が効きにくい
・うつ病と言われると喜ぶ傾向がある
・怠業、怠学が長くつづく傾向がある
・他罰的で、何でも親とか上司とか、会社とか学校とか、自分よりも環境が悪いという立場、つまり「人のせいにする」。

だからと言って「うつ病」でないワケではない。
典型的ではないけれど、明らかなうつ病症がある。

NHKに「切れ」たのは、医療機関がこれを「つくっている」という風なモノの言い方をし、これによって利益を得ているとか、薬を大量に出して儲けているというくだりである。

これは、NHKの誤認というか、悪意というか、今病院はクスリをいくら出しても儲かったりはしないし、そのような仕組みがあったのは昔の話で、今はクスリを出すと赤字が出るような薬品まであるくらいで、事実とは異なる。

また、クスリはできるだけ少量処方の方が好ましいのは言うまでもないが、出さない方が治りにくく、依存もしやすいし、副作用も出やすいという危険もある。

クスリを出すとか、うつの診断をするとかが、いかにも悪いことのように述べられていたことに腹を立てているというワケである。
これはNHKの報道の仕方に時々見られるもので、ケシカランなぁといつも思っていたことでもある。

最も依存しやすい医者の処方の仕方というのは、精神安定剤と睡眠薬をそれぞれ単剤で出すというものである。
例えば、デパスとかソラナックスとかマイスリーとか、短時間作用型薬剤は、短期的にはよく奏効することがあるが、半減期がきわめて短いので「薬が切れた」時の苦しさから、すぐにそれを求めてしまうので、アッという間に依存をつくってしまう。
したがって、筆者の場合、デパスとマイスリーという処方を心療内科医が単剤で出していた場合、その医者は逆に金儲け主義か無知か、ただのヤブ医者という風に見ている。
そもそも本物のウツなら、薬は一定量飲むまで、中途半端な量だと全く効果がないことも多いのだ。

このような意図的な少量処方で、多くの患者さんを薬物依存、病院依存にしておけば、診療も簡単に「ハイ、おくすりです」てな調子で出しておけば、もしかして病医院の経営も安定するかも知れない。
このような治療構造をつくり上げておけば、医者も看護師も事務スタッフも、何も考えなくて良いので、とても楽であろう。
アタマを少しも使わないので、バカになってしまうかも知れないが・・・。

先日、仰天してしまったものでは、痛風の治療で評判の良い、大繁盛している病院があっ
て、友人が通院していたのであるが、1ヶ月経っても痛みが取れない。
どうしてだろうとクスリを見せてもらったら、ただの痛みどめだけの処方であった。

コルヒチンという、昔からある特効薬があるのに処方してないのだ。
唖然としてしまった。

もしかして、患者さんを多く集めて、長く通院させるという経営上の戦略を立てたならば、このように病気や痛みを「治さない」というヤリ方もあるらしいのだ。
とても怖い話である。

その上で、余計な検査を定期的に施せば、利益を上げることができる。
このような理由で、株式会社のような純粋に営利目的の企業体に医療経営をさせてはイケナイのだ。
病気が早く簡単に治るという患者さんの利益と「経営者」としての医者の利益が必ず相反してしまうからだ。
この大きな矛盾点を脱却できないまま、色々な医療制度を次々と打ち出してくるので、医者も患者さんも混乱しているのだ。

マスコミが高度先進医療とか大手術とか、めずらしい病気の治療を想起して医療を考えているので、我々のような町医者、プライマリケア医についての現状をあまり配慮せずに、もしくは軽んじて医療政策を推し進めているような気がする。
病気というものは、治療より予防の方がはるかに効率的で安価なのだ。

話を戻すが、少量処方の医者が良医ということは絶対にない。
そのように視聴者を誘導するような傾向があるので、「刺せない釘」を打っているという次第である。

多少、自己弁護的であるが「うつ病」を早く薬物依存なしで治そうとするなら、多剤併用療法が最善と考えている。

これは明瞭に結果や実績を出している。
特に若い女性の場合、自然にクスリを飲まなくて、良くなって治って来院されなくなったり、幸福な結婚や出産に至った症例を数多く持っているので、ここに自信を持って書き述べている次第である。

少しく専門的になるが、
・SSRI、SNRI(セロトニン再取り込み阻害薬)
・スルピリド(ドグマチール)
・三環、四環系抗うつ剤
それに軽い精神安定剤などを組み合わせて服用してもらうと、依存も深刻な副作用も無く、早期に治癒、寛解に至る。

そうしてSSRIの単剤投与、少量投与に持っていく。
時々はクスリを飲まない方が楽という方もおられるが、この場合は直ちに投与をやめる。
こういう場合、うまく「うつ病」の例では自覚症状が一番の指標であるからだ。
ただし治療者と被治療者の双方が、この病名に逃げ込んで「キッチリと治療したい」「ゆっくり休みたい」という形式としての共通の欲求を満たしてくれるので、便利な病名ではある。
そういうわけで、会社や学校や家庭や社会全体から見ると、看過できない問題を孕んでいるのは事実であろう。

一般の企業における、社員の最も大切な心理的なエネルギー、即ちモチベーションが下がるという最大のマイナス要素の凝縮された疾病だからである。
そうした背景を元に「会社を襲う・・・」という表現になったのであろう。
一般のうつ病、特に中年の男性、昔で言うマジメな「企業戦士」みたいな人が最も治りやすい。
薬効も抜群である。

心療内科で、治療的に行われる認知行動療法のようなものも一切不要であるし、特に有効ということは無い。

一方、この新型うつ病に分類されるケースでは、精神療法、心理療法、心理教育みたいな治療法は結構有効なのではないかと思える。
何故なら、このタイプの病者は殆んど例外なく人間関係における知識の無さ、心理的未熟さ、人生や社会全体に対しての誤った考え方、否定的な感情をお持ちの方が多いからである。

いずれにしても、根気強く、忍耐強く格闘していかなければならない「病気」であるが、筆者の経験では転職や突然生じた恋愛沙汰や親子の離別、離婚や結婚、出産など環境の変化によって自然になることも多い。

そのような意味で「入院治療」が有効のケースも多い。
ただし、所謂「新型うつ」も分類される若者の場合、入院により悪化することもあるので注意を要する。

症例によっては入院後、即退院というケースも少なくない。

繰り返しになるが、筆者の治療目標は当然ながら断薬と完治である。そのための多剤併用処方であるし、非依存(医者にも薬にも)と病院離脱はその良い指標と考えている。昔は「一生服薬」と言われていた高血圧ですら、根気強い熱心な生活改善で、症例によっては断薬に成功することもある。

ありがとうございました
M田朋久


濱田.comへ戻る浜田醫院(浜田医院)コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせいよくある質問youtubeハッピー講座