コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 個別指導2011. 9.30

進学塾か家庭教師のお仕事のことではない。
開業医にとってこの言葉は結構ストレスのかかる公務員の人々の医者に対するお仕事で、確か国家公務員でも「医療技官」とか呼ばれる医師免許を持って実際に医療に携わったことのある「医師」に自分の書いたカルテ(診療録)を見らながら難クセとか「イチャモン」をつけられる作業のような感覚になって、失礼ながら誠にイヤラシイ。
日本の医療制度は世界でも最高水準のものであるらしく、一般の国民は良質な医療サービスをリーズナブルというか割に安価に享受できて幸せである。
しかし、その制度を支えているのは医師や看護師を中心とした医療サービス提供者の「献身的」な毎日の活動なのだそうである。

それに対して何だか追い討ちをかけるように厚労省やその管轄下にある保健所や保険の基金の元締めから細かく「査定」されてくるし、色々と書類仕事を増やされていささか困惑してしまう。
先方さんに同行したスタッフと一緒に「査定」と表現したら「指導」と怒ったあるネ。
言葉は大事である。

いずれにしても子供が大人の監督下・支配下にあり、銀行が金融庁の監督下にあるように、我々医師も厚労省の監視下にあるのだ。

それは割に緩いもので、基本的に私達医師を信頼する立場をとってくれているし、かなり自由な裁量権を与えてくれているので、プライドも傷つけられないし、患者さんの為にそれこそ「献身的」に働いて、それについての対価をキチンと払ってもらえるので有難いことではある。
一生懸命勉強して国家からおし戴いた「高価」な免許証だけのことはある。

ありがたや、ありがたや。

指導は8月の某日、午後2時から4時30分まで短い休憩だけでミッチリ行われた。
場所は熊本市の城下にあるKKRホテル。
この施設は主に国家公務員、たとえば警察官とかが優遇されて良く使われる建物で、弁護士もその対象となるそうである。
何故か医者は優遇してもらえない。
どうでも良いことであるけれど。
国から見た医者の身分というものの限界と微妙さが表出される事実である。

現実に医者の仕事の内容はすべてカルテに記載、記録されなければならない。
その記録を担保として診療報酬が支払われる。
医療ミスやその後に起こるであろう裁判沙汰に対してだけで記録するだけではないのである。
その診療報酬を払う側(支払基金)が一々文句を言ってくるのは当然であろう。
その際の基準となるのは都会の電話帳かカラオケ目次本のように分厚い「診療報酬請求の解釈」という緑色の「テキスト」である。

仕事を適正にしているかどうかチェックするのにカルテしか無いワケであるから仕方がない。
イチイチ患者さんを呼びつけて「事情聴取」するワケにもいくまい。

技官先生が積み上げられた貴重な書類のタバを一枚一枚丁寧にめくったり、パラパラとめくったりしながらカルテを読んで色々と質問をしたり指導なさるのを見ていると、ある種の違和感を憶えた。
正直ビクビクと怖じ気づくのを自覚した。
別に悪いことはしていないのに・・・。
それにカルテに記載された内容と実際の診療とか患者さんとのやりとりがかなりズレてしまう。
これはすべて文字で記録されたものに当てはまることで仕方のないことだ。
こんな現実と記録の乖離など世の中にはゴマンとあるので技官の先生も充分了解をしておられるように見えた。
・・・けれどもカルテそのものへの鋭い指摘は淡々とつづけられる。

一生懸命マジメにして来た医療行為にカルテだけを見て色々と論評されるので、多少心外であるけれど、お互いにそういう仕事であるから恭しくご指導を仰ぐ次第である。

筆者は日記を書く習慣を持たない。
日々の活動はただ思い出として脳に記憶させるだけである。

訴訟や裁判になると、この習慣は大きな弱点となる。

あの日あの時、何をしていた?の質問に答えられないからだ。

今流行の警察映画や警察ドラマ、サスペンスなどでも犯人逮捕の決め手は何と言ってもアリバイである。
「何日の何時何分頃、アナタは何をしていたのか?」
この質問と回答で事件は最終的に解決をみることが多い。
これからはとにかく何でも記録しておこうと思う。
毎日の行動やその日の出来事を記録しておくことはとても大切なことなのかも知れない。

顧問弁護士から「先生は(日々の行動を)記録したりしないんですネ」と、少し非難めいた語調で言われて小さなショックを憶えたものだ。

記憶より記録。
これが証拠能力は確かに高いし、人に説明しやすい。
とんでもない嘘ッパチやデッチアゲを記録しておきたいという欲求が全くないので、これはまことに健全な習慣にちがいない。

個別指導・・・で得た大きな教訓であった。
お疲れ様でした。

ありがとうございます
M田朋久


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