コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ いささか2011. 7. 1

最近は粗食を戒める内容の健康本が出回っている。
長寿健康には高栄養が大切。
とりわけ「肉は良い」というワケである。
当然ながら栄養の問題は健康管理に極めて大切である。

「成功する人は缶コーヒーを飲まない」
「介護されたくないなら粗食はやめなさい」
という書物を読んだ。
前者は心療内科医、後者はドクターではない栄養学・老人学の「先生」が著者である。

確かに粗食が健康に良いとは言えない。
毎日、野菜とか蛋白質とか炭水化物とか上手にバランスさせながら食事を摂らなければ健康を維持できない。

けれども「肉を食べよ」というのには少し異論がある。

筆者の30年の開業医経験からすると、癌などの悪性疾病、もしくは脳の変性疾患、例えばパーキンソン病・ピック病・アルツハイマー病など横文字の何ともイヤラシイ難病の方に過去の食事のインタビューをした経験では、それらの殆んどの人々がすべて肉食家であった。

一方、当方の経営している老人施設の百寿者の方の多くは肉も魚も牛乳も飲まないという「偏食」の方も多い。
少なくとも野菜と魚を中心に小食される方が健康長寿であられる。

肉に含まれる色々なビタミンとか蛋白質、特にアミノ酸が脳やカラダに良いと科学的・栄養学的に研究されているらしいが、実際に百寿者を含め多くの患者さんには食事の内容について必ずインタビューしているのであるが、、少なくとも当科では肉を多く食べる人は一見元気そうに見えるけれども病気持ちの方が多い。
色々な不気味でイヤラシイ病気にはなりたくないし、患者さんにもなってもらいたくないので、このような本を読んでも俄かには信じないようにしている。

「肉を食え」というのは食肉業界やら食品業界の陰謀ではないだろうか。
だいいちみんな粗食だったら、グルメ番組も高級飲食店も食品会社も潰れてしまうであろう。
その上、地球の食物連鎖の観点からも人間が肉を多く食するというのは環境上も好もしくない。

戦国時代を見事に勝ち抜いて、その長命健康で最後に勝者となった徳川家康も、ブタ丸焼きとかを食べた美食家の豊臣秀吉にくらべると粗食であった。
肉と言えばせいぜい鳥肉を食べたくらいであるようだ。

本やマスコミや、インターネットや他人の情報にまどわされてはイケナイ。勿論このコラムも含めてである。盲信禁物。
身近な長寿健康者をよく観察し、その話しを聞くことだ。
大概の研究者・学識者・実験者とは微妙に違う筈である。

もしも筆者自身がその健康法で若々しい長命で、素晴らしい健康を享受している百寿者であれば少しは信じても良いであろう。

肉やタバコについては、それに強い遺伝子というものがあるのではないかと思える。
筆者の研究では、所謂、悪食・悪飲に耐えられる体質・遺伝子を持つタイプの方が時々おられて、それで少し研究者も混乱しておられるのではないかと想像される。

遺伝や体質やそれぞれのタイプ、或いは家庭環境、生い立ち、人間関係、精神状態なども重要で、意外にも割に厳しい環境で育ち、食事も満足に摂れなかった人に長寿者が多い。
少なくとも高栄養食で健康になった人は少ないが、だからと言ってマチガッタ知識による自分勝手な粗食で健康を害する人がおられてまぎらわしい。

肉が脳の変性疾患を惹き起こすのは筆者の仮説であるが、一種の血流障害の為であろうと考えている。肉食をすると、毛細血管の血流が40%悪くなるそうで、中には動脈硬化も促進されると考えられ、慢性的な赤血球の通過障害が組織の酸素不足、つまり顕微鏡的阻血、循環障害、栄養障害を生じさしめ、結果的にそのような曲々しい疾病に至らしめると考えている。

悪性腫瘍については少なくとも大腸癌、直腸癌については殆んど野菜嫌いの肉食家の方がなるようだ。
長寿者の特徴を否定形で少し列記してみると、
1)大食家ではない
2)肉食家ではない
3)頑固な人ではない(頑固というのは精神的な老化と言える)
4)暗い人ではない
5)悲観的な人ではない
6)年を取ることを嫌がっている人でもない
所謂、アンチエイジングへの強い執着は逆効果のような気がする。
一見、年老いてヨボヨボした感じの高齢者は割に長命である。
男性の長寿者の性格特徴は、一言でいうと「開放的」なことであるし、何事も隠し事がなく開けっぴろげな人が長生きであるそうだ。

一方、女性では世話焼きの明るい性格。
「肝っ玉かあさん」みたいな人柄の人が長命であるそうである。

最後に戦国乱世に生まれ、100歳まで元気に生きた江村専斎の言葉を記しておきたい。
京都の医者で90才を越えても視聴衰えず超人的な記憶力の持ち主であり、時の上皇もその「術」を問うたところ「もとより他術なし。平生、ただ些かの一字を守るのみ」と。
どういう意味かと問われて「食を喫する些、思慮も些、養生も些のみ」と。

食べるのも少々、考え事も少々、健康法も少々・・・となるであろうか。
専斎と接した人によると、淡として物にこだわらず、若い人とも普通に話したとある。
大いに参考にしたいものだ。

ありがとうございました
M田朋久


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