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| ■ ６月の雨の夜に | 2011. 6.29 |
或る事情があって大金を喪失し、再びいくばくかのお金を手にした時、いつ失するかも知れない自分の生命とお金を思い切り使ってやれと街に出てみたものの何もすることが無い。 イヤ、「したい」ことが無い。 このことに気づいて、これはひょっとしてマズイ事態ではないかと思えるので、ここにその経緯を記してみたい。 仕事とバイク以外の殆んどの事柄に倦きてしまったようだ。 元々食べたり飲んだりすることに興味がないし、僅かに残った性欲を闇夜の晩にかざす提灯のような按配で頼りにし、何とか生を保っているといったような暮らしをしている。 考えてみれば有難いことである。 何の不満も無く、現在の生活に心から満足し感謝しているワケであるから・・・。 「無事是貴人」と言うではないか。 何事も無い、何もするべきことが無い、何も思い悩むことが無いだけでとても幸せなことなのであるから。 よくよく考えてみれば、職業人として「するべきこと」は山のように在るようであるけれども、折角の自分の人生だ。 好きなことをして暮らしたいではないか。 そういう意味で仕事があり、苦にならないのは有難いことではある。 少し前まではバスケットボールに夢中で興じていたが、トシのせいか息切れするし、心臓のバタつきが練習を終えてもナカナカ治まらないし、何だか若い仲間たちも老け込んでカラダに悪そうなので無理矢理一時中断している。 夜の店に出入りしてカラオケを歌ったり女の子や中年の女性やマスターと称する男性と話などしたりしていても何の面白くもない。 内容に興味が湧かないだけでなく、何となくお金よりも時間の無駄のような気がしてこれまたやめてしまった。 しばらくは映画に凝って公開される作品を次々と制覇していたが、これまたとうとう飽きてしまった。 そうしてやはり読書に戻って来てしまった。 新しく憶えた文章書きも少々の忍耐と苦痛を伴うものの楽しい作業である。 モノを書き、絵も描いてみようと思う。 少し明るい気分になったけれどもヒョットしたら鬱病かも知らんなとも思える。 「・・・欲望の低下」というのは鬱病の本態であると心療内科の権威、芦原睦先生もおっしゃっていた。 無鉄砲に送られてくるダイレクト送付雑誌などをめくっていると億ション、つまり一億円以上するマンション。 アメリカ風に言うとコンドミニアムの広告があって、これもまた割にワンパターンで、豪華なエントランス、都会の夜景を一望できるパノラマ風の大型ガラス窓と屋内のプライベートプールと体育館のように広々としてシンプルなカウンターつきリビングとかがあって、少し目を惹いたもののこれもまた筆者の興味を少しも惹起しない。 そんなところに住むのは東京出張の折の高級ホテルで充分であって、毎日そこにいたらアタマが痛くなりそうである。 真っ平御免こうむりたい。 どうせ住むなら純和風の、開け閉めの度にガラガラと大きな音を立てる格子戸の玄関と、板塀に小さな花壇かなにかある庭と縁側、畳の和室に和テーブル。 そこでかつては美しかったと思えるような上品な奥さんにお酌をしてもらって小さな盃でチビリチビリと日本酒を飲むというシチュエーションがよろしい。 決して高級コンドミニアムではない。 田舎に住んでいると、そのような和風な生活が割と安価に手に入りそうで、少しだけ心ときめく。 今の欲望の最たるものはオートバイである。 以前に或る知人から、夜、先生は高級ワインかブランデーを片手にジャズかクラシックを聴きながら革張りの厚く深いソファーにくつろいで医学書かなんか読んでいる・・・という風に言われたが、全く逆でフトンの周囲には雑然と本や雑誌やエロ本が散らばり、壁にはいささかお下品な劣情を催す女性のカラダの部分を写した写真なんぞを貼って発泡酒を扇風機の前で１０分ごとに飲みながら卑猥なことを考えながら何とか興味のある本や、仕事の為に仕方なく読む本とバイク雑誌とファッション雑誌とエロ雑誌を交互にめくりながら台風が通り過ぎた６月の下旬のムシムシする夜を独りで過ごしている。 もう少しマシなことを考え、もう少しマシなスタイルで生活すべきかと思いつつ、結構な商売で成功したお金持ちの叔父さんや従兄たちも似たような生活で、どちらかというと筆者の方が外面的には派手に見えるらしいので本当に心から満ち足りた生活を送っているので、性欲以外に何の欲望も心に生じないのは至極当たり前のことかも知れない。 何も欲求が無いということは満ち足りていて幸せなことである・・・と信じようと思う。 何だか全然ウキウキもしないのは少し残念であるけれど・・・。 ありがとうございました 濵田朋久 | |
