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■ あの胸にもう一度 | 2010.11.25 |
現代は「モーターサイクル」つまりオートバイのことだ。 天下の美男俳優アラン・ドロンを主演に、当時の可愛い子ちゃん女優マリアンヌ・フェイスフルをヒロインに製作されたフランス映画で今もDVD化されているので結構名作なのであろう。 およそ40年くらい前の映画である。 物語はスキー場のロッジで見かけた二組の男女のカップルの一人の女性にあろうことかバーで目の合っただけのアラン・ドロン扮する大学教授が深夜にコッソリ「夜這い」をかけるというもので、冒頭からかなりエロティックである。 女性の方は最初はてっきり恋人だと思っていたところ、途中から別の男(ドロン)と気づいたものの、その深い快楽に身をまかせてしまう。 シーンは変わって、たまたま本屋の娘として働いていたその娘と再会したドロン君はまたしても彼女をオートバイの後ろに乗せ雪山に入り、山小屋で強引に一発やっちゃうというもので、このあたりは冷静に考えると破茶目茶なポルノ映画の感がある。 最初からバイクとエロスをうまくリンクさせてあって興味深い。 その後一度は大人しい小学校教師と結婚した、その可愛い子ちゃんも悪い男アラン・ドロン君に結婚祝いに贈られたハーレーダビッドソンの大型バイクにまたがり、フランスから国境を越えてドイツに住む悪人、大学教授に会う為に通いつめる若い人妻の何ともケシカラン不倫物語である。 素裸の上に羽毛つきの黒いレザージャケットを身につけたスタイリッシュでセクシーな人妻ライダーが最終的に狂ったようにキルシュとかいう濃い目の酒をあおりながら広々とした幹線道路をぶっ飛ばしていって、トラックに激突してあえなく即死するという結末で、考えてみると結構痛ましい悲劇物語ともなっている。 この映画のもう一人の主人公は世界の鉄製の名馬、ハーレーダビッドソンで「音」がたまらなく良い。 筆者はこのハーレーというバイク、実のところあまり好きではなく買ってもらっても乗りたくないオートバイのひとつであるが、ひとつにはそのライディングスタイルが気に入らないからだ。 足を前に投げ出して後ろに反り返るような乗り方になって、まるで耕運機に乗っているような按配に見えるからである。 その上、このオートバイの構造上いかにもコーナリングが悪そうである。 日本の狭いワインディングロードにはあまり適さないと思うのだけれども、根強いファンが日本中にいっぱいおられて時々例のリベットのついた黒のレザージャケットとかチェーンネックレスとかヒゲヅラとか二の腕を出すベストジャケットとか「イージーライダー」か「マッドマックス」みたいな感じで集団でドコドコ走っておられるのを拝見するが、個人的には同じバイク乗りでも全くスタイルのちがう人々なので一緒にして欲しくはない。 筆者のバイクは国産のスポーツバイクで、ロングツーリングも出来るヨーロピアンタイプと呼ばれるもので、やや前傾姿勢で機敏に軽快に乗りまわす類のオートバイである。 今のところ、孤独や悲しみや種々のストレスを最も癒やしてくれるのはこの鉄のオトモダチ、オートバイが一番で酒やギャンブルや「オンナの人」もこれには敵わない。 上記したネガティブな感情を一気に解消してくれる忠実な友人みたいなものだ。 これに乗りたくないと思った時には、筆者の若さは完全に失われた時か死んだ時か重いうつ病になった時であろう。 最初に本格的に乗り始めたのも20代の時の大失恋であった。 とても素敵な女性に出逢って、それなりの幸福を味わうのであるけれど、どうしても最終的にはうまくいかなくなる。 そうしてお決まりのバイクである 虚無の悲哀と憂鬱と難事難題からの現実逃避にこれほど適したものはないと思えるが、それが何故なのかは今でも不明である。 多分そのヒントがこの映画「あの胸にもう一度」かこの映画の原作本に秘められているかも知れないので今度しっかり再観賞してみるか、原作本を探して読んでみようかと思う。 ありがとうございました 濱田朋久 |