コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

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■ ティファニーで朝食を2010. 8.26

個人的には意外に思えるのであるが、トルーマン・カポーティ原作の小説のタイトルである。
同名の映画も有名で、あのオードリー・ヘップバーン主演で相手役に端正なマスクのジョージ・ペパード。
ヘンリー・マンシーニのロマンチックなメインテーマ「ムーンリバー」が全編に流れる元祖アメリカンロマンチックラブコメディーの傑作である。

早朝のニューヨーク五番街。
静かに奏でられるムーンリバーをBGMに横幅のだだっ広い黄色のタクシーがしずしずと画面の右下端から登って来て、開店前の有名高級宝石店「ティファニー」の前に停まる。
髪を高く結い上げて黒のワンピースにゴージャスなネックレスと黒いサングラスで、今風に言うとセレブにキメた痩身の美女のオードリーが降り立つ。

大理石とぶ厚いガラスケースに埋め込まれた宝石を見つめながら紙袋から取り出したクロワッサンを頬張りコーヒーを飲む。

まさしく「ティファニーで朝食を」である。
言うならば朝帰りと思しき妙齢の女性が無人の大通りのショーウィンドーの前ではしたなくも立って朝メシを喰らうなんて・・・と思われそうであるが、それはそれナカナカ、エレガントにファッショナブルにキマッておる。
大したものである。
流石、大女優の貫録。

もともとオードリー・ヘップバーンなる女優さん、個人的にはあまりお好みではない。
けれど、こういうイデタチというかライフスタイルというかモデル風というかそれなりにカッコイイと言えばカッコイイ。
もともと彼女はベルギー人らしいので宝石店とのマッチングもとてもよろしい。
ダイヤモンドの多くがベルギーを中継して世界中に販路を開いているそうであるから・・・。

物語は金持ちとの結婚を企てるヒロイン、オードリーとこれまたお金持ちのツバメとなっている作家の卵、ペパード君との恋を中心に当時流行していたであろうハチャメチャなプライベートパーティの模様や、本物のセレブやセレブもどきの人々の生活様式と虚栄と物悲しさが漂う場面がいくらかあって、これはいかにもカポーティらしい。

最終的にはお決まりのハッピーエンド、雨の中のキスシーンでチョン。
それでもこのパターンはアメリカ製映画のラブロマンスの典型的なカタチで、つい最近まで堅固に守られてきたストーリー展開で観客も割に安心して映画を観賞することができる。
日本の時代劇みたいなものである。
筆者がこの題材を扱ったのには少しく意図があって「ティファニーで朝食を」というタイトルそのものの中にカポーティの人生観が丸ごと込められていて、それは富というものの虚しさとそれを密かに上手に味わうコツというものがこの物語とタイトルに織り込んであって流石だなぁ・・・と思ったのでこうして筆をすべらせている。

それは富の特徴である宝石店などというものは開店前にショーウィンドーから見ながらファーストフードをパクつきながら眺めて味わう、ごくささやかなヨロコビの対象物であって、それを本当に買ったり所有したくなくてもそれが買えない貧しい身であっても充分に味わえる場所であるからあくせくと働いたり、妙な企てや策をろうしてワザワザ手に入れなくても良いじゃないのというようなメッセージが込められた物語なのではないかと筆者は捉えている。

虚栄の満ちた世界もそれなりに存在価値があると思うのだけれども、この映画のハッピーエンドのように「愛に生きる」方を選択した方が幸せみたいな・・・。

こういう物語って何だかお金の無い人には安心できそうですネ。
フランスのミュージカル映画で「シェルブールの雨傘」。
カトリーヌ・ドヌーブ主演の映画は決してハッピーエンドでは無いけれど愛よりも富を選択せざるを得なかった女性の悲劇を描いてあって、比べてみられると面白い。

随分昔の映画であるけれども前者の映画は明るくハッピーで、後者のはモノ悲しくせつない。

富とかお金とかとっても便利ですけど愛の成就には邪魔なのかも知れません。
「ティファニーで朝食を」にしとけば安全ではないでしょうか。
お金持ちでなくてもアタマとかセンスさえあればそれなりにカッコヨク美しく生きていけるものなのではないでしょうか。
この映画の主人公、オードリー・ヘップバーンの演ずる○○○のように・・・。

ありがとうございました
濱田朋久



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