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■ 少女ポリアンナ | 2010. 1.18 |
こんなに、いっぱい涙を流しながら読んだ本はめずらしいので、少し紹介がてら、書き置いておきたい。 米国人女性作家で52才で亡くなったエレノア・ポーターという人の作品名である。似たような物語に「赤毛のアン」というのがあるが、こちらはやや文学的でリアリティーも高い上に愛読者も有名であるが、所謂「泣ける本」としてはこのポリアンナに軍配を上げたい。とにかく天真爛漫で無邪気で天使のように優しく、底抜けに明るく、周りにいる人々を誰かれとなく、幸せにすることのできる11才の女の子の物語である。 児童文学としては、結構傑作のひとつと思える。何せ、やたらに涙がいっぱい出せる。 この11才の主人公の容姿については、うす茶色のお下げ髪、そばかすだらけの小さな顔といった具合にごく普通の小学校6年生くらいの少女として描かれているが、何せ可愛い女の子というものの理想的な「人格」が表現されていて子供の啓発書としても、大人の読み物としても、結構読み答えのある小説となっている。 会った人殆んどすべて幸せにしてその心を虜にする、女の子という存在には一体どんな特長があるのだろう。 1、どんな人にも分け隔てなく純粋で暖かい興味と関心を示し、見返りを求めず、相手の素気ない意地悪な対応に対しても根気強くコミュニケーションを図るところが、誠に健気で可愛らしい。 2、どんな辛い境遇の人にもそこに何らかのプラスの面、肯定的な要素をゲーム感覚で考えようとする姿勢。 これがこの小説全体に流れるメインテーマのひとつで「よろこびのゲーム」として表現される。 3、どんな時にも純粋で善良な優しさで人々を助けようとする。 4、この世界を無邪気にありのままに受け入れて、それらから、何らかの「よろこび」を見出そうとする心の姿勢。 これは赤毛のアンと少し違うところで、アンのそれは、想像力や独特の芸術的感覚でそれらを主に自然や人間同士の愛の中に見出そうとしているようで、ポリアンナよりもより知的で、エゴイストチックで、ずる賢く、気が強い。これらは赤毛のアンの魅力を決っして削いでしまうようなものではないが、ポリアンナの可愛らしさや、かなり悲劇的とも言える、交通事故の顛末などもエピソードとして、散りばめられ、より一層、ポリアンナの愛を奉仕の精神が読みとれる。 元々、ポリアンナは貧しい牧師の一人娘で、人生の早期に、つまり11才で両親共に失くしてしまった孤独の少女の筈なのにである。 ポリアンナは全く持って性善説のカタマリのような思想の持ち主で、疑うこと嫌うこと、あきらめることを知らない究極のオプティミストであるにもかかわらず何故に涙を誘うかというに、やはりその純粋で無垢な愛を好意の周囲への無条件の放射というものであろうか。 ポリアンナの無垢で純粋な他者への愛を示すいくつかのエピソードを拾ってみたい。 『「あの、ポリアンナさん?」 声をふるわしてたずねると、あっという間に、チェック模様の腕に抱きしめられ、窒息しそうになりました。 「わあ、あたし、もううれしくって、うれしくって・・・・・」ナンシーの耳もとには、このようなはずんだ声が聞こえてきました。』 これは、唯一の血縁であるポリーおばさんの使用人のナンシーが、ポリアンナを駅に迎えに行ってはじめて出会った時の光景である。 次に、あまり子供が好きでない、ポリーおばさんの待つ家での最初の出会いの場面。 『ミスポリーは、めいをむかえるために、席を立ちませんでした。・・・・(中略)「はじめまして、ポリアンナ。わたしは・・・。」 ポリアンナはあっという間に、ひざにだきついて来たのであとがつづけられません。 「ああ、おばさんね。ポリーおばさんね。わたしをひきとってくださってほんとうにありがとう。わたし、もううれしくて、うれしくて・・・。」 ポリアンナの目からなみだがこぼれていました。』 次は『「先生、医者って世界一すばらしいお仕事ネ。」チルトン先生はびっくりしてふりかえりました。 「世界一だって?どこへいってもいつだって、くるしんでる人ばかりの相手なのにかい?」 「ええ。だって、人をたすけているんですもの。それにたすけることのできる自分自身もうれしいはずだわ。」 医者の目には、あついなみだがあふれていました。・・・(中略)・・・ こうやってポリアンナのかがやく目を見つめていると、頭の上にやさしい愛の手がさしのべられたような気もちでした。・・・・』 泣かせますネェ。 こうして、冬の夜のひとときを、電気ストーブの前で、涙にくれながら「少女ポリアンナ」を読み終えたのでした。 人に喜んでもらえるのは、それ程難しいことではないのかもしれません。 誠実で愛にあふれた人々への心からの関心を寄せ、恐れを持たず、見返りを求めなければ・・・・。 そして、嬉しそうに幸福そうに人生を、楽しんで生きれば・・・・。 ありがとうございました。 M田朋久 |