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■ スーツにネクタイ | 2009.12.10 |
近頃の若者のスーツ姿もナカナカ最近はイヤにカッコヨクなっているような気がする。 流行りの細身のスーツに明るいネクタイ、尖った先端を持つピカピカの靴とトゲトゲさせた短髪か柔らかいロン毛。 そろいのダークスーツも集団で歩く姿は、ロンドンのシティやニューヨークやウォール街の彼らに決してヒケをとらないのではないかと多少贔屓目に見てしまう。 昔の映画を観ると、必ず伊達男の定番ファッションはスーツ姿だ。 筆者は医者であったので、スーツを着るチャンスは殆んど無かったのであるが、ヒョンなことから開業医7年目で青年会議所という団体に所属したものだから、その団体の月一回の「例会」やさまざまの行事の度にガラにも無くスーツ姿で、当時は定番の小脇にたずさえた小振りのセカンドバッグと携帯電話で通りを集団で闊歩したものだ。 今思えば少し恥ずかしい。 けれども、どんなことでも後利益というものはあるようで、おかげでこのスーツという誠に便利な男のワードローブを手にし、それを板につかせてくれた(!?)という意味では結構有難い団体所属体験であった。 以来、仕事に限らず衣服のコーディネートを考えるのが面倒くさいのでスーツにしている。 一部の女性達は「センセーのジーンズ姿も若々しくて良いですヨ」とか「セーターを素肌にはおったらセクシーよ」とか、いくら甘い言葉でおだてられてもナカナカにスーツとネクタイは脱げないでいる。 今は一部のベンチャー企業の雄達は堂々とネクタイもせず、ジーンズにTシャツとかボタンダウンのYシャツとかで仕事をしているらしいが、これらの人々も公式の場ではやはりネクタイを締めているようだ。 不正疑惑で有名になったライブドアの元社長、堀江貴文さんは一回もネクタイ姿を筆者には見せてくれなかった。 太い首には流石に首に巻く布製の飾りは似合わなかったのであろうけれど、同じくM&Aの旗手、楽天の三木谷クンなんかはネクタイを何とかしてくれていてお利口さんを装ったのが奏功したらしく、今でも経済界では良く先輩に可愛がられ健在のようである。 やはり「郷に入りては郷に従え」ということだろうか。 まずはメデタシメデタシ。 今のところはネクタイ勢の勝ちのようである。 国際的にも中国人はビジネスマンでも殆んどネクタイをしないが、ヨーロッパ人やアメリカ人はまだまだ保守的なのか、少なくとも公式の場では必ずネクタイ着用のようである。 何しろテレビのような媒体に出てくる人がスーツノーネクタイだとドキッとしてしまうのが、何かのスキャンダルがらみの犯罪で逮捕された時にはベルトと一緒にネクタイをはずされ、覆面パトカーに乗せられ、マスコミの一斉フラッシュを浴びるといういつものパターンの映像とダブってしまうので、筆者としてもノーネクタイのスーツには恐ろしくて挑戦できない。 「はぐれ刑事純情派」なる藤田まことの人気ドラマでも俯き加減の主人公がこれまたネクタイなしであったが、何だか失業者のようで裏寂しくて気分が落ち込むような気がした。 ちなみに警察官が職務質問に選ぶ怪しい男というのが、 @色が黒い A足早にキョロキョロ歩く Bノーネクタイ だそうで、筆者としても職務質問などまっぴら御免であるのでますますネクタイをはずせないし、通りは悠々とゆったり歩きたいし、ゴルフやアウトドアスポーツなどで日焼けするのも遠慮しておきたい。 非行少年時代に何度もパトカーには乗せられたし、警察署の裏の武道場で張り倒されたり小突かれたり、取り調べの部屋の破れた椅子で調書を取られたり・・・とロクな思い出はないので、どうしても防衛的にこの殆んど面白みのない定番の衣装に頼ってしまう。 コトはン何でも格好やイデタチが大切である。 ジーンズとかチノパンとかその他のカジュアルウェアというのは格好良く着こなすコーディネートがやたらに難しく、この年なのでいきなりダサイオジさんになってしまいかねない。 そもそもスーツですら油断すると先述した若者のようにカッコウヨク決められるとは限らず、カジュアルウェアよりもダラシナク見えることもあり、一方では妙な若造りは逆に「ダサイ」の極致でもあるのだ。 その上ジーンズなどとくらべるとスーツの機能性は計り知れない程優れている。 衣服そのものが極めて使いやすいバッグのようなもので収納力バツグン。 極端に言うと手ブラの一泊旅行くらいへいちゃらだ。 その上、手ブラのスーツ姿というのは少し偉く見えるかも知れないし、それにしても昔の映画の男達のスーツ姿の何と優美でエレガントなことか。 ああいう美しい着こなしは最近ではあまり見かけなくなった。 何故なんだろう・・・。 松本人志とか島田紳介とかニュースキャスターとか国会議員とかエレガントさに欠け過ぎている。 殆んどリクルートスーツにもならないし、オジサンスーツとも言えない程カッコウが悪い。 上下合わせたスーツにネクタイというのは本来オシャレ着というより社会人の、特にホワイトカラーと呼ばれる人々の制服であるので、制服美としては軍服に劣るが、人間社会への帰属意識を示すシンボリックな衣装でもある。 昔は社会への反逆のシンボルとしてG―パンがあったように思うが、今はこれは昔と違い、どちらかというと軟弱なオシャレ着と成り下がってしまい、老若男女あらゆる階層の人々が無差別に無頓着に着ておられて何の統制美もバランス美も無くなってしまい、これまた本当にエレガントに着こなしている人は芸能人や映画スターを含め少なくなってしまったように思える。 先述したようにジーンズの着こなしは結構難しく、まず体型を選ぶ。 痩せすぎても太り過ぎても似合わない。 特にお腹の出た人はやめた方が良い。 今流行のローウェストジーンズなども見ていてあまりカッコウの良いものではなく、あれはただの流行であり自己満足に過ぎない。 特に「私は腹は出ていませんヨ」と威張っているようで嫌味たらしいし、女性がこれを着ているとお腹のふくよかな女性美が一気に消失してしまうし、ヒップラインの「貧困さ」が目立ってしまい、少なくとも成熟した女性が穿くものではないように思える。 それでもローウェストの、所謂「腰穿き」という着こなしなので何となく心もとなしか着なれてくると逆にクセになるくらいであるから奇妙である。 ファッションというのは本来アタマを結構使うものなのだ。 ファッションセンスの良い人はやはりアタマの良い人が多いように思えるが、天性のものでもあり、あくまで感性・感覚の分野なので苦手の人はどんなにお金をかけてもダサイ人はダサイ。 少し前の大女優でエリザベス・テーラーという人がその典型であった。 ありがとうございました 濱田朋久 |