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■ 良薬はチョット口に苦いものだ | 2009. 9. 6 |
当法人グループには、顧問弁護士という少し大仰でモノモノしい響きの役の方がおられて、筆者の素晴らしい人格、お人柄、頭脳の明晰さ等最も尊敬する人々の中の一人で、東京大学を卒業されておられる個人の弁護士事務所の所長さんでもある。 この先生に色々な法律的な相談をすると、最初は叱られているのではないかというくらいにこちらにとって厳しく不利なことをおっしゃるので少し面喰うが、冷静に考えるてみると至極当然なことであるので、筆者の治療上の行為や処方にも通じることがあってこれを書にしてみようと思う。 世の中には悪徳弁護士とか大物弁護士とか、テレビに出てくるタレント弁護士とか大阪の府知事になった有名弁護士とか経済企業弁護士とか、医者の世界と同じようにそれぞれ得意分野というのがあるようで、個々の活動を通じその仕事というのは社会の中で意外に多種多様であるようだ。 「医者」と言ってひとくくりにできないように、弁護士と言ってひとまとめにできないもののようである。 それでも「弁護士会」という組織は「医師会」などよりもはるかに権威と重みがあり、これに所属できないと弁護士として仕事をすることはできないらしい。 優秀な弁護士の特質をあげるならば、それはいかにクライアント(依頼人)に有利に法律の知識を使っていくかということになると思うが、これまた医者の世界と同じように無能なくせに自分の金儲けに走るというような太くな弁護士も結構おられるようである。 所謂社会の悪と戦う市民の権利を守る有能で有徳な弁護士さんというイメージは一般庶民の考える普通の弁護士の姿のように思えるが、これは少し考えが甘いと言わざるを得ない。 医者も弁護士も国家資格を持った謂わばエリートであるが、生きていく為には商売、ビジネスをしなければならない。 つまり利益を上げなければ存在できないという側面もあるのでそうそうキレイゴトだけ言っているワケにはいかないのだ。 医者の場合は特殊な場合、たとえば美容形成とかエステとかの自由診療に関わる人々を除いて、一般的には公的な保険医療制度に基づいて仕事をするので半公務員のようなものであるけれど、その制度の中で「金儲け」に走ることもできるものらしい。 近頃実感したことのひとつに、病気や症状を治せない方が「儲かる」のではないかと思うことが再び多くなった。 友人の一人がある繁盛して評判の良い病院に、或る病気で約一か月あまり通院していたのであるが、軽快せずに筆者の処方するクスリを服用したところ一日で治ってしまった。 これは自慢をしているワケでも、そのドクターを批判をしているワケでもない。 ただあまりまっとうに仕事をしても商売にならない、つまり利益を上げられないかも知れないという医療制度上の暗部というか恥部があることをお伝えしたのである。 もっと過激に表現すれば、ヤブ医者や金儲け医者の方が繁盛し儲かるという側面があるということだ。 モチロンその逆もあり、あまりにもヤブであると評判が悪くなり患者さんが来なくなるので、このあたりの匙加減は絶妙なバランスが必要であるが、時には抜群にアタマの良いお医者様がこのカラクリの盲点をついて「儲ける」と決心したならば、かなり思い切った戦略を使って、それこそ利益を上げることができるかも知れない。 筆者の場合、そのようなコトまでして医者をしていたくないし、面倒臭いので、正直にコトにあたり看護師さん達にも恥ずかしくないようにし、夜もゆっくりと安眠したい。 年を取って悪相になるのもイヤなので、少しカッコウをつけて述べるならば「天に愧じない」ように真正直仕事をしているつもりである。 それで、我が医療法人グループの顧問弁護士の先生も多少酒飲みで酒乱の気があるものの、とても正直で倫理観と美意識や感性の鋭い方なので、筆者としても絶大な信頼を置いているのであるが、その仕事ぶりのひとつに「クライアントに厳しい」という特質というか傾向があられるようである。 その理由は何故かというと、まず裁判や訴訟事で勝つという優秀な弁護士というものは、決して依頼人に甘い言葉をかけたり同調したりしないで、敵(訴えた側)や裁判官(裁決をする人)にそれを納得させる為に一時的にそれらの依頼人の敵方、あるいは公的・社会的な見地に立って依頼人と戦っておく必要があるからである。 つまり、依頼人を法律的に守る為に公的・社会的そして敵方的立場でもって前もって依頼人を責める、詰問する、時には説得するという厳しい態度で接するということをなさるのであろうと考えている。 であるので、この顧問弁護士の先生が本格的に乗り出した時に「負けた」ことは一度もないのであるけれど、それは自分(顧問弁護士)に勝たなければ「相手にも裁判にも勝てないヨ」という意味であろうと解釈している。 逆から見ると、依頼人に良いことや甘いことばかり言う弁護士は有能でないばかりか、金儲け主義の不徳な悪徳な弁護士か無能な弁護士とも言えなくもない。 医者の仕事もそういう傾向があり、優しい甘い言葉だけのドクターには注意がいるかも知れない。 また、脅しやハッタリで仕事をしておられる先生もおられるようで用心したい。 良い親、良い教師、良い医者、良い弁護士。 いずれも本質は慈母のように優しい心根であっても、時に表面は厳しい言葉や態度で堂々と叱れる人々なのではないだろうか。 意外に良医、良薬を見きわめるのは、その「苦さ」「厳しさ」の発揮しどころではないだろうか。 立派な子供に育てるので、甘い優しいだけの親は絶対的に好もしくないように、子供の幸福にとって厳しい親、激しい親というものは結構有難いものであるのだ。 良薬というものが少し苦いように。 良い弁護士が依頼人にとって少し厳しいように・・・。 ありがとうございました 濱田朋久 |