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■ 週刊誌 | 2009. 8.12 |
かれこれ10年あまり新聞も読まず、テレビも見ず、ラジオも聞かずという日常を送っている。 何故意識的にそうしているかというと、最初は実験であったのであるが、やはり生活上の何の支障もなく逆に有益で楽しいひとときを大量に過ごすことができてズイブン気分も良いのでつづけている。 丁度、酒を毎日飲んでいた人が酒をピタッとやめてしまい、酒なしの生活を始めたようなもので、酔っ払いもせずいつも素面であり、目覚めており、クールでいられる・・・ような気がする。 実はついでに酒もやめており、これは結構便利である。 まず、昨今とても取り締まりの厳しくなった飲酒運転の心配がなくなり、モチロン代行運転を頼まなくても良いし、酔って気分を悪くさせるような会話をしたり、悲しくなったり、怒りっぽくなったり、スケベになったりせず、いつも淡然と紳士然としていられるのが良いし、毎日本も読めるし、書きものもできるし、思索もスポーツもできるし、時には隣町までバイクか車で足を延ばし、映画を見たり本屋やショッピングモールをウロついたり、昔の暴走族のように車の窓から腕をたらして街をゆっくりと流すこともできる。 良いことづくめだ。 とにかくテレビ、新聞、ラジオと酒を断てば、日常の世界がすべて巨大な書斎と化すのである。 さらに良いことに偉大な神の芸術作品である女性というものを養っているこの世界のパノラマ芸術をじかにシラフのアタマで鑑賞できるという特典まで勝ち取ることができる。 ヘタな映画なんぞより筆者の日常の方がずっとドラマチックで、ロマンチックで冒険的で、時に喜劇的でも悲愴的でもあるので、毎日毎日寝るのも食うのも惜しむ程で、己の感覚と思考をフル稼働させてこの世界を貪欲に味わい尽くそうと考えているので、上記のようなありきたりな日常習慣を私生活からは取り除いている・・・。 けれどもコンビニに行った時には必ず雑誌や書籍のコーナーに向かうのであるが、どうしても誘惑に駆られて週刊誌というものを買ってしまうのである。 週刊誌の良いところは少なくとも一週間分の出来事をまとめて、勝手な論評つきで読むことができるので結構面白い。 一週間分の歴史読み物と言っても良い。 中国人にとって、書というものは歴史書を指すらしいが、愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。 というように、ついでに筆者は易を学んでいるので中国五千年の英知を学んでいるということになり、現代人の浅知恵や自分のゴミカスのような経験など及びもつかないものなのに、歴史や古典も読まず、モチロン易学など決して学ばず、新聞や月刊誌、週刊誌、雑誌なんぞを有難がって読んでおられるのを見ると少し気の毒に思えることもある。 それでも週刊誌というものは結構侮れない。 時々とても貴重な情報がさり気なく1ページでスッキリと、とても簡潔に書かれていたりして、かなり有難い。 週刊新潮2009年7月30日号320円にザッと目をとおすと「ガン練習帳」という筆者の職業柄どうしても目をひくタイトルの記事があって、ガンにまつわるさまざまの迷信を突き崩し、現時点の正しい知識を載せてあった。 筆者の浅い知識でも既知の内容であった。 それでも現在の真実の80%は30年後は真実でなくなるそうなので、この分野でも長い歴史とか昔からの言い伝えみたいな「おばあちゃんの知恵」の方に軍配が上がりそうな気がする。 これは臨床医としての偽らざる感想である。 それと、悲惨であったのは登山者の遭難の記事であったが、これは「運」というものが生存と遭難死を分けたという風に論評してあったが詳しく読み込むと、そこには小さな知識の集積とその実践が生存者としての生還を促しているように思える。 たとえば、体温持続の為の保温への配慮、食糧摂取の知恵、低体温症や転落への知識などの他に最も大切なものがガイドさんも含め、優れた「リーダーシップ」の不在というものが、この悲劇の中心的要因となっているが、このような遭難事件の場合、古今東西世界中あらゆる場所で起こり得る同様の結末の主たる原因となている。 八甲田山死の彷徨という「国家の品格」の著者の藤原正彦氏の父で作家の新田次郎氏の小説があるが、これは実話にもとづいていて、日露戦争に備えた冬の雪中行軍の訓練で起こった大量遭難事件を扱ったものであるが、愚かなリーダーか優れたリーダーかのどちらかに率いられたかが若い軍人たちの生死をを明瞭に分けている。 優れたリーダーの条件と言えば、やはり思考力、知識、判断力、決断力、運、いずれもその総合的なものであるが、やはり豊かな知識や経験に基づいた高度な判断力である。 この事件でもそれは全く例外ではない。 その他どうでも良いような有名人のゴシップや映画評、政治評があるが、実のところ現実的にはこれも究極的にはどうでも良いことばかりで、殆んどゴミのような情報ばかりである。 そういう意味では320円という値段は高いようでもあるし安いようでもある。 やはり「心理学」という子供や一般向けの1,500円の本の方には圧倒的価値のある情報が全ページに記されていて、ボロボロになるまで読み込むだけの価値ある一冊となっている。 約一か月はこれを持ち楽しんでいるが、日常生活にも仕事にも極めて有益な本であるので、比べてみると週刊誌もゴミに思える。 ありがとうございました 濱田朋久 |