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■ 仮眠の告白 | 2009. 6.10 |
筆者の仕事の日の過ごし方の特徴というと表題にあげた「仮眠」である。大袈裟に表現すると朝昼晩、食前食後に場所を選ばす、仮眠をとる・・・ということである。 何故かというと、一番は「眠気に弱い」というところがあるからだ。まるで子供のように「眠い」と感じると、不機嫌になり、憂鬱になり、怠情になり、死にたくなる。何かしら、生きる意欲が低下したときに、妙に深刻に考えずに、無理矢理に寝てしまうと、嘘のようにスッキリすることがある。 「あの気分はなんだったのだろう・・・」と不思議なほど仮眠の効果は高いような気がする。我ながら情けないほどにこの眠気には弱い。 日頃から、自称「虚弱体質」という風に周囲に公言しているので、割合スンナリと周りを気にせずに堂々と寝床にはいったり、ソファーで寝こけたり、はたまた診察室の椅子で呆けたように眠ることもある。時には、畳の上か布団の中で大の字になって、心おきなく仮眠をとる。車の中や、バイクのツーリング中でも、休憩の合間には、仲間たちの奇異な目に恥を恐れずにこれまた堂々と地べたや木陰など小さな空間をみつけて寝そべって仮眠を楽しむ。 「先生はビョーキ」なのではなかと訝かしげに聞いてくる素朴で純な友人もいるが、職場の何人かは、筆者のこの習慣を知っていてくれて、診察日には休憩室にキチンとフトンを敷いてくれており、とても有難い。 山本周五郎の傑作小説に「寝ぼけ署長」というのがあって、新しく赴任して来た署長さんがいつもデスクに寝こけていて、それでいて立派な書物や、仕事をスムーズにこなしていて在任中には、事件解決(真実は水面下で事件を未然に解決していたのであるが・・・)の数が極端に少なかった・・・というのは、やや道教的な思想に基づいた物語であるが・・・。ひとつの仕事人の美学であると思えるし筆者の目標でもある。 さて具体的な仮眠の取り様を書いてみたい。 まず、朝早く起き過ぎたと感じた時には、迷わず2度寝的な仮眠をとる。時間は7時〜9時の間にチョコチョコと横になって眠る。実は朝の仮眠は少し難しい。体内時計の関係で深夜から朝方にかけては、覚醒するように脳やカラダが活発に働くからだ。それでも深い眠りを目標にしなければ、つまり真の意味の睡眠でなければ、その効果の実感覚には深い午睡や夜の睡眠に劣らないものがある。 昼食の後の仮眠は結構深い。夢まで見るし、起きた時に「ここはどこ・・・私はだれ?・・・」「朝か!!」なんていう事もある。 夕食前の仮眠も時々する。これは、少々寝覚めが悪い。余程疲れているという証拠なので、「疲労の蓄積」の感覚が寝醒めの悪さであろうと考えている。逆に憂鬱になることもある。 夕食後もまた仮眠だ。よくクルマの中で寝る。部屋に入ると好きな本があるし、片付いていない部屋で横になるより、飛行機のコックピットのような、車の座席に埋まり、シートをリクライニングさせて好みの音楽を聴きながら、仮眠に入るのは最高だ。時に悪夢をみるが気にしなければ良い。 夜は眠れない。仮眠でないからだ。考える作業に没頭するので、クスリを飲んでも朝まで眠れないことがある。日中の大量の仮眠のせいかもしれない。 本を読み、映画を観て、思索し、コラムを書き、日記を書き、時には手紙を書く。そして、タバコ1本と水割りを1杯と焼きそばかうどんを食べる。 そして野菜ジュースとヨーグルトと豆乳を飲む。これは、アルコールを飲みすぎない為だ。夜は中枢神経が鈍感になるらしく満腹中枢もうまく働かないのであろう。ついつい飲みすぎ、食べすぎ、吸いすぎになってしまうのでそれらをごまかしてくれる水分の多い食品はとても有難い。 仮眠も普通の夜の睡眠も或る程度の集中力は欠かせないものだが、深夜はこれも低下してしまうのか、眠りも浅く寝付きも悪くなるようだ。 ただ、仮眠も普通睡眠もその時間と深さにはこだわらないようにしている。追求するのは「心地よさ」だけである。「イカニキモチヨク眠れるか・・・」このことに意識を向けている。 そのコツをいくつか紹介しておきたい。 1)まず、決して眠ろうとアセらないこと。これは仮眠にも睡眠にも重要なことだ。「ただ心地よく横になっている」ことを目指す。 2)次はいかに心地良くアタマからカラダに意識を向けるかである。概ね覚醒状態では意識は頭にあるので手足の先から、心地よさを追求していく。 3)3つ目は、イメージの創造である。これは、美しい星空とか風わたる心地よい草原というのが定番であるが、時にはヤシの木の繁った浜辺など・・・とにかく自分にとって、心地よくくつろげるものなら何でもよい。 4)4つ目は呼吸への集中である。腹式呼吸をして、特に腹部と胸部を隔てる横隔膜という筋肉をしっかりゆるめる。この感覚が筆者の場合、入眠の最初のポイントだ。この時点で、全身の不快な感覚は一気に快感に変わる。これで入眠完成といっても過言ではない。 5)ついでに述べるなら、所謂、精神安定剤や睡眠薬は仮眠の時には使用しないようにしている。リバウンドが来て起きた後にしばらくして不快な感覚が出現することがあるからだ。ただし、心の病気の人や、悩み苦しみを抱えている人はこのような薬物を積極的に使用したほうが良い。そもそも仮眠が自由自在にできる人というのは、心が健康である証拠であり人生生活全体が充実している証拠ではないかと考えている。 ただし非番や休みの時には、眠りがすべて心地良いというよりかえってからだもココロも疲れた感じになることが多い。注意したいものだ。 「心地よさ」の追求を仮眠時の、ひとつの目標とすることは、あらゆる意味の休養、休憩のヒントになるのではないかと考えている。 ご参考までに。 ありがとうございました。 濱田 朋久 |