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■ 博識か専門知識か | 2008. 5.12 |
「万事についていくらか物知りの方が、一事に精通するよりもはるかにまさる」 −パスカル− この言葉には全く肯首せざるを得ないであろうけれども、多くの人々はこの言葉とは逆のように考えている風に見受けられる。 専門家と呼ばれる人は多く「偉い人」と見なされていて何かしらコトがあるとすぐに相談しようとする人がいるが、世間の多くの人々も何の疑いもなくそのことに対して不満を漏らす人も少ないが、果たしてそれでいいのだろうか? 少し考えてみたい。 ハッキリと申し上げて、多くの専門家と呼ばれる人々はどちらかというと愚かな人が多い。 ・・・と言うより知識の少ない人が多いように見える。 敢えて逆説的に捉えようとしているワケではなく、純粋に現実的に世の中を見まわしてみて色々な事実を総合的に分析してみると、そう確信せざるを得ないのだ。 筆者は医者であるから、一般的に言う「専門職」であるが医学知識というものを少し学校で学び試験に合格して仕事をしているワケであるけれども、「医療」というものについては最近まで全くの無知であったような気がする。 というよりも医療行為というものが一体世の中でどういうものであるのか、医療制度とか医療経済とか医療政策とかについても今でも時々理解できないことがあって、色々と資料を集めたりひとりで考えたりして自分のアタマの中を整理して、少しだけ解ったような気分になっているくらいのレベルである。 今の世の中では先進国だけでなく世界中どこでも医療行為を堂々と出来るのはその国の国家資格を与えられてはじめてできる業である。 当たり前であるが、「お医者さん」であるからと言って偉いワケでもお金持ちなワケでも、身分が特に高いワケでもない。 ただ勉強が少しできて、タマタマ難しい試験にうかっただけの人である。 だから尊敬される必要もあがめたてられるような職業でもない。 ただ、その国家資格を得て多くの人々の肉体を癒やしたり、助けたり救ったりするお手伝いをする仕事を一生懸命やって来て、人々の健康や幸福の一助となった「お医者さん」はやはり文句なしに「偉い人」と言えるかも知れない。 医者は専門職だからと言って決して「専門バカ」になってはイケナイと思う。 その理由は人間を直接に扱う職業なので広く深く高い知識を持っておかないと「病を見て人を見ず」、「木を見て森を見ず」みたいになってしまうかも知れず、本末転倒というか何の為の医療行為なのかわからなくなる危険があるかも知れないからだ。 これは政治家とか経済人とかのいわゆる専門でない人で、とても重い責任を持たされている人、高級官僚とか警察官とか消防士とか教師とか専門職とは呼ばないけれど公的な仕事を受け持つ人達や、弁護士とか会計士とか税理士とか、そのた諸々の専門職と呼ばれる人々の多くが何故かしら「人間学」みたいなものを多く欠落させているように感じられる出来事が多いと、人間についての広い知識( 博識)を持っていないか、興味も無さそうな人々が少ないように見えて、先述のやや過激で仮説的な感想を持っている。 「人間」について最も知っておくべき「お医者様」が逆説的に最も知らないように見えるのはひとつには学校で教えないことに起因しているのかも知れない。 医学教育というのは、まず哲学、宗教学、倫理社会学、心理学、政治経済その他人間に関わるあらゆる学問を基礎に教えてから今の現代医学、即ち生物とか物理とかの自然科学を教えていくべきと考えている。 けれども現実には、医学部は今のところ理系ということになっているが、決して理系などという範疇に入るものではないと思えるのであるが、モチロン文系というものでもなく敢えて述べるなら人系なのであるから実のところ文系になるかもしれない。 そもそも自然科学も哲学を祖としており、医学も自然科学の一分野であるので、最低限哲学を徹底的に学び、モノの考え方については知識の記憶吸収も大切であるけれど、最低限自分のアタマで考える習慣くらいつけた方が良いのではないかと思える。 追記@ 税務とか会計とか法律とかその道の専門家である税理士、会計士が良く自分の専門分野について精通しているかというと案外そうではなく、結構わかっていない人が時々散見される。 テレビなどでも数人の弁護士が出てきてある問題についての意見が結構分かれるし、先日大阪府知事になった若い弁護士さんなどは知識の少ない人の典型であったような気がする。 追記A いわゆる専門家を盲信しない方が良いと思う。 行政府の中の専門家会議みたいなものが一番個人的には信じられない。 何故かというと、結果がチットモ良くない。 追記B 経済学でノーベル賞を取った人が会社をおこしすぐ倒産したことがったが、これなども専門家というものの知識の狭さ、怪しさが良く解る事実だ。 「医者の不養生」というのも或る意味この専門バカのひとつとも言えるのではないか。 追記C お医者さんはまず人文学から入るべきかも知れない。 心理、教育社会とか歴史とか政治経済はまっ先に学ぶべきかも知れない。 ありがとうございました たくま癒やしの杜クリニック M田朋久 |