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■ 薬物というもの | 2008. 4. 8 |
人間の健康とか生活について配慮する時、薬物というものの範疇を広く捉えてみると、ただ「クスリ」と称するものだけを薬物というワケにはいかないと思う。 一般的には、クスリの副作用について問題視する傾向が、一般社会でも薬剤業界でも、モチロン医療の現場でもあるけれど、だからといってクスリの有益性について理論的に副作用が上まわることは滅多にない。 つまりクスリには何らかの益がある筈なのである。 筆者が薬物と捉えている日常一般に普通に食料品として飲用、食用されているものを列挙すると以下のようになる。 ○タバコ ○アルコール ○コーヒー ○お茶(緑茶、紅茶) ○糖分(甘いもの) ○塩分 ○香辛料 糖分や塩分を薬物と見るのは少し乱暴であるが、大量に摂取した場合に、肉体や精神に影響を与えるという点で列挙してみた。 ザラッと評価してみると、タバコの成分であるニコチンは末梢血管を収縮させて精神を高揚、もしくは鎮静させる。 その他さまざまな有害な成分を含んでおり、世界中で社会的な問題となっている。 その嫌煙キャンペーンの割には、テレビやドラマや特に映画では、俳優さん達が盛んに吸ってみせている。 タバコ会社の影響力は今でも結構まだまだ大きいであろう。 子供の奇形や未熟児や早産の原因には明らかになるらしい。 弟夫婦は妊娠中もタバコを盛んに嗜んでいたが、見事に早産で、その赤ちゃんは保育器のお世話になった。 発癌性も結構あるらしい。 アルコールの有害性についてはあまり知られていないが、その依存症の深刻さは、社会問題になりそうであるが、今のところそのような社会トレンドはなさそうである。 未成年の喫煙防止策として、自販機での購買がタバコでは難しくなったが、アルコールについては現時点ではその障壁はない。 タバコなどよりはるかに有害と思えるのだが・・・。 アルコールはニコチンなどより脳神経毒性が高く、大量飲酒者は脳が萎縮してしまう。 これまたアルコール製造メーカーの影響力もあると思うが、タバコと同じく酒というのはひとつの文化であるので、これまた無闇に禁止するワケにもいくまい。 昔アメリカでは禁酒法という天下の悪法があったが、この法律はマフィアの資金源を肥大化させただけであった。 アル・カポネがこの悪法で莫大な資産を作ったが、脱税で逮捕され、若くして獄死した。 コーヒーに含まれるカフェインという薬物は軽い覚醒作用があるが、依存性も軽度で脳神経毒性も殆どない。 1日に3杯飲用すると、生活にリズムが出て元気になる感じがする。 ただ、循環器特に心臓に負荷をかけるので、不整脈持ちの人や心臓の力の弱い人は気をつけたほうが良い。 データ的には緑茶とくらべ、寿命をやや短くするそうだ。 ただし最近では、コーヒーを常飲する男性は膵臓癌になりにくいというデータもあるらしい。 真偽の程は不明。 油物を摂った時や、肉を食べた後にコーヒーを飲むと、消化を助けるというより、胸のつかえが降りる。 緑茶はタンニンとかビタミンCとかよくワケがわからないが、健康的な薬物である。 ワザワザ“健康茶”などと謳わなくても昔からもともとクスリなのだ。 健康に良い飲料で若さを保つらしい。 ただし、空腹時に飲むと胃が悪くなる。 糖分、甘いものは瞬間的にカラダを元気にする。 気分も高まる。 これは炭水化物全般に言えることだが、食した後、気分が良くなりしばらくするとストンと落ちる。 つまりリバウンドが起こる。 過食症の人は、大概炭水化物とか糖分を摂る。 そして嘔吐する。 したがって糖尿病は少ない。 過食症で肉をガツガツ食べるということはあまりない。 糖分そのものに精神の安定と快楽をもたらす作用があるが、血糖値が不安定になり、結果として気分の波が激しい落ち着きのない人柄とか不機嫌で怠惰な性格を生む。ただし疲れているときや頭を使う人が瞬間的に飲用すると元気になる。 やはり米食が一番良い。 朝から米食を摂る人は、日中も元気で血糖値も安定しているので、糖尿病も少ない。 面白いことに糖尿病の人は、朝はパンとコーヒーなどという人がなぜか多い。 朝のホテルのバイキングの料理の選択を必ず観察しているが、痩せたスマートな人か体型の普通の人は概ねごはんと味噌汁と煮物などを食べているが、肥満した人かまたガリガリに痩せた人、もしくは糖尿病と思しき人はパンとコーヒーとベーコンエッグなどという選択をするようだ。 塩分については、医学的にさかんに研究されているが、減塩食というのが必ずしもカラダに良いとは言えないらしい。 逆に寿命を縮めたというデータもある。 朝、水と一緒に摂取すると、便秘に良い。 大量に食すると、浮腫(むくみ)が起こることがある。 夜中まで酒を飲んで、寝る前にラーメンを食べて汁まで飲んでしまうと、朝から顔がむくむ人がいる。 カラダ、特に腎臓に負担をかけたという証しになる。 その他、違法なものとしては麻薬があるが、アヘンとかモルヒネは大昔からあって、人間の精神に多幸感をもたらすが、戦争中は重要な鎮痛・鎮苦薬物で、現在の癌の患者さん同様多くの戦傷者の苦しみを取り除いてくれるアリガタイ薬物であるが、世界中でその快楽目的の使用は法律で厳しく制限されている。 依存性が生じ、人間を退廃的で怠惰にし、中毒者はその薬物を手に入れる為にあらゆる悪事を働くという意味で取締りが厳格である。 ヘロインという精製された麻薬は、モルヒネの100倍くらい脳に直接強力に作用するが、日本では普通手に入らないが、南米のコロンビアでは、かなり大量生産され、その筋の人々によって北米大陸に渡り、非合法の組織犯罪の資金源になっている。 今はメキシコでも作られていて、メキシコのルートもあるらしい。 最近はコカインというヤヤコシイ薬物もあって、アメリカでは富裕層も含めて常用者も多いが、ヘロイン程の深刻な中毒性はなく爽快な気分と活力を一時的に得るが、連用するとやはり「ひきこもり」みたいになる。外科の黎明期に著名な外科医がこのコカインを日常的に飲用して学術的には業績を残したが、結果的に人格の荒廃を招いて苦しんだ。 昔は、香港の麻薬ルートもあり、インドシナ半島南側のタイとベトナムの国境の接した三角地帯というところで生産され、香港を経由して世界中、特にアメリカに渡った。 清朝時代のアヘン戦争の名残である。 アヘン戦争の時は、イギリスが大儲けをして、今は中国系の銀行を肥え太らせている。 100年以上経っても基本はあまり変わってない。 覚醒剤はそのものズバリ脳を一時的に覚醒させる薬物で、極めて依存性が高くカンタンに中毒者をつくる。 日本人は主にこの覚醒剤が好きであるようだ。 ヤクザと称する暴力団の闇金融と同じく重要な資金源で、今は主に北朝鮮から密輸されるらしい。 覚醒剤を使用してSEXをすると、快楽が数倍し長続きするらしく、多くの男女をこの薬物の耽溺者とする。 大麻と言う薬物は、その作用も中毒性もあまり大したことはないが、多くの芸能人をスキャンダルの渦中の人とした。 ただボーッとするとかがチョット楽天的になるらしい。 いずれも本の知識だから詳細は不明だ。 有機溶剤、即ちトルエンとかシンナーとかボンドとかの吸引はしたことがあるが、何の快楽もなかったがクセにはなった。 依存性が結構高く、脳を破壊する。 歯が悪くなる。 やはり違法な薬物には、違法になるリッパな理由があるようだ。 医療機関で使用される薬物は、劇薬という分類に入るものまで含めて、一般に思われているほど危険な薬物はあまりない。 精神安定剤、睡眠薬、向精神病薬、鎮痛解熱剤、鎮痙剤、胃腸薬、降圧剤、強心剤、昇圧剤、気管支拡張剤、消化剤、カゼ薬・・・ 最近ではED治療薬とか生活改善剤の高脂血症治療薬がメタボブームで大量に使用されている。 脱毛治療薬も目新しい。 いずれにしても、25年近くの開業医経験からしてみると、良いクスリ・便利なクスリは生産中止になったものが多い。 メーカーが儲からないからどうでも良いような新薬ばかり作っている。 降圧剤(血圧のクスリ)などその歴史はまだ新しく、寿命を伸ばしQOLを高めたというハッキリした証拠はまだない。 高脂血症の治療薬なら尚更だ。 医者として正直に述べるなら、最も有難いクスリを3つあげるなら ○精神安定剤 ○鎮痛剤 ○抗うつ剤 である。 後は気管支拡張剤(喘息のクスリ)と降圧剤、そして酸素とブドウ糖だ。 大昔から全然変わらない。 最近のトピックは、ED治療剤バイアグラだ。 これはファイザーという製薬メーカーを世界一の企業にした。 全男性の福音的オタスケ薬だ。女性もかも知れない。 これはSEX産業全体、文化全体に寄与していると思うが、あからさまに言い立てるひとは少ない。 インターネットのエッチサイトのようなもので、見ている人は多いがそれを話す人は少ないというのに似ている。 長くなりました。スミマセン。 たくま癒やしの杜クリニック M田朋久 |