[戻る] |
■ 医療制度について | 2008. 3.27 |
日本の場合「国民皆保険制度」と「出来高払い制度」という2つの特徴がある為か、行政つまり制度を作る側の方針に振り回されてしまって、医療機関の経営に計画を立てたくても危なくて容易に立てることが出来ない。 次々とカンタンに制度を変えられるので、設備投資も人員採用も計画的に行うことができない。 旦那さんの給料が一定でないドサ回りの芸人さんの奥さんになったような気分だ。 医療にはお金がかかる。 主なものは人件費、薬剤費、そして設備投資に要した借入金の返済と税金だ。まさかホッタテ小屋では今時の患者さんは来るまい。 経営上、黒字であっても実際に医療法人(会社)にお金は残らない。 昔は薬価差益、つまり薬剤を使うだけで利益が生じた時代があった。 50円で買って100円で売るみたいにだ。 これは普通の商売では当たり前のことだ。 一部のブランド品など10倍がけだそうだ。 つまり、1万円の原価のものを10万円で売っている。 だからブランド品ビジネスはとても儲かる。 売れていればの話だが・・・。 一方病院のクスリの場合は、薬価差はせいぜい10%だ。 つまり、90円で買ったものを100円で売る。 こういう商売は普通成り立たない。 薄利多売という手法でも儲からない。 日本の税制だと売り上げに対して税金がかかるので、原価代を払って、税金を払って、ついでに借金して購入した場合、銀行に返したら完全な赤字である。 そもそも物販の場合は、保管にも運搬にもお金がかかる。 その上医療の場合、それを扱う事の出来る人は、医師・薬剤師などの有資格者の高給取りなので、さらにお金がかかる。 普通に成り立つ商いでは、最低30%から40%の差益が要る筈だが、多くの医療関係者は、医師や薬剤師の技術料を出しますからと騙されて差益0に限りなく近づけさせられた。 このカラクリは、製薬メーカーも厚労省も解っていたはずだが、医師会とか薬剤師会とか有資格者の団体の幹部の長は解っていたのか押し切られたのか制度としてはこの数字は医療機関を苦しめる事になった。 またアメリカの真似をして「医薬分業」、つまり医療と薬剤を分離すればケリがつくと、「医薬分業」を推進したが、これは患者さんにとっては2度手間である上にお金も2重に払い、良い事は何も無い。 完全なサービスの質の低下だ。 その上入院中の薬剤費は全部医療機関持ちなので、差益の少ない薬剤など保管しておいているだけで赤字のつく在庫になってしまう。 他の商売、例えば利回りの良いレンタルビデオ屋などは、1000円で買ってきた商品を300円で4回貸せば元が取れ、10回貸せば2000円の利益を生むばかりでなく、純粋に経費に計上できるので、とても利回りの良い金融商品よりも利益を短期間で得る事ができる。 つまり経理上は「ゴミ」を貸してお金を半永久的に生む事ができる。 こういうカラクリの増殖でTという全国チェーンのレンタルビデオと本屋のコンプレックス店舗は一大チェーン会社になった。 もっと良いのは携帯電話だ。 一回お客に端末機を売りつけるだけで、月に数千円から数万円自動的に確実にお金を殆ど何もせずに得る事ができる。 水道とかガスとか電気とかの設置産業と同じシステムだ。 銀行のATMなどもそうだ。 殆ど人件費なしで、お金を出し入れするだけで、機会に手数料を払わされている。 顧客が全部操作する、つまり銀行業務をしているにもかかわらずである。 これらのビジネスと比べ、医療機関は全く正反対の今回の制度をつくった。 クスリだけの患者さんも5分以上の診療がないと再診料が取れないそうだ。 これは或る意味患者さんには有利だ。 再診料を払わなくて良い。 何となく5分というのが、誠にイジマシク、セコイ話だけれども、医者になってこんなに情けない気分になったことはない。 私たちはクスリ屋さんではないけれど自販機でもないし、携帯電話屋さんでもない。 けれども床屋さんでもない、美容師さんでもない。 つまり、「薬を処方する」というのは完全な医療行為なのだ。 その処方の内容には多くの知識と経験と汗と涙が込められているのだ。 こんな制度を変えられると美容室のチェーンとかラーメン屋さんとか焼き鳥屋さんの外食チェーンの方がはるかに安全で、確かなビジネスに思える。 医者は技術を持った労働者である。 忙しくて経営者にはなれない。 そういうアタマもない。 なのに経営センスは要求されている。 「考えよ」と言う。競争しろという。 どうやって何を競うのだ。 美人の看護師さんか、ハンサムな医者かスーパースターの高い技術を持った医者がいるといっても新米のヤブ医者も料金は一緒だ。 人件費も薬剤費も下げられない。 税務署も銀行も迫ってくる。 マスコミもうるさい。訴訟リスクもある。 まさに四面楚歌だ。 一番の頼りは、ナースであり、クラークその他多くのスタッフだ。 そして最も大切なのは患者さんだ。 患者さんにいっぱい来てもらえるだけでお金なんかどうでも良いと思って仕事をしてきたが、どうもそういう呑気な時代ではなくなったようだ。 4月からの医療制度改革で、職員の人々へ告げたのは、正しい道を辛抱強く進みましょう。 15%ほどの売り上げ減が見込まれるけれども、全く悪くなるわけではない。 行政のイジマシクてセコクて姑息な制度改革への対応に追われ右往左往するのだけはやめましょうと・・・。 世の中に受け入れられない仕事なら別だが、私達を必要としてくれる人々がいるというのは幸せなことだ。 世の中は理不尽な事も多く矛盾に満ちている。 生きていけるだけでもよしとしようではないか。・・・なんてね。 別にカッコつけているわけではなくて全くの本音です。 それ程、医療経営というものが追いつめられているようです。 まるで他人事みたいですけど・・・。 皆さんよろしくお願いいたします。 追記@ 医者の仕事は好きで、他の頼りになる医療機関も今のところ元気なのだから何とか、もっているが、一生懸命仕事をしてくれる職員の給料を上げてあげれないのが経営者としてはセツナイですね。 追記A病院も有料の自動検査機械かなんかあったら、便利で利益なんかもあがるかもしれない。人件費がかからない。 3万円とか入れて、その機械に入ったら自動的に人間ドックなみの検査結果を得る事ができる自動検査受診機。 医療も介護も労働集約型の仕事である。今は若い人も少子化で減っている。医師不足も喧伝されている。・・・にもかかわらず制度はどんどん逆行している。不思議である。国役所の人にサディストでもいるのであろうか? 追記B バイアグラとかのED治療薬、プロペシアなどの脱毛治療薬など、カンタンなスクリーニング検査を自動でできる今のタバコ自販機みたいな機械があればもっとよく売れるであろう。これは悩める患者さんにはとても便利であろう。 特にED(勃起不全)治療薬ほど自販機で売るにふさわしいものはないと思える。 何しろ買うのが恥ずかしい。 男性雑誌・ビデオの自販機と少し似ている。 病院の夜間、待合室に監視カメラつきで置いておけばよく売れるだろうけどな〜。 喜ぶ人も多い筈だ。 中国では空港の「みやげ物屋」でバイアグラのコピーが売ってあった。 値段は日本のそれの1/4くらいであった。 追記Cさりながら、医療制度というのは医療関係者を守っている側面もある。 「価格競争」という地獄を見なくて良いことだ。 保険による医療費は公定価格である。 全国どこへ行っても、例えば「胃の検査」というと同じ値段で受けられる。 また殆ど同じサービスを受けることができる。 「同質価格競争」しかできないので、先述したように美人のナースとか気持ちの良い接遇とか、優しいドクターみたいに非常に程度は低いが、当たり前のサービス競争で、患者さんを多く集めるしかない。 ごく普通の病気の検査とか治療については日本全国どこに行っても殆ど大差はない。 雑誌で見る病院ランキングどれくらいの意味や価値があるかわからない。 ただし、難治性の病気とか難病奇病の治療についてはそれはあるかも知れない。しかし対象となる疾患は一般の人々が思うほど多いものではない。 ありがとうございました たくま癒やしの杜クリニック M田朋久 |