コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 医療ビジネス2008. 3.24

医療をビジネスと捉えて、営利を目的に医療機関を経営してはならないことに日本の法律では今のところなっている。
これは或る意味とても妥当なことで異論は無い。
何故ならば以前にも書いたように、医療サービスを営利目的に提供しようとすると、とんでもない事態が生じる可能性があるからだ。

例えば、伝染病を例に挙げてみよう。
インフルエンザが流行すると、一般の内科の病院は患者さんがいっぱい来て儲かるとしよう。
このときに医療機関の経営にとっては、インフルエンザの流行は好ましい事態ということになる。
これは社会全体や、国民や国家からすると決して好ましい事態ではない。
つまり社会と医療機関で、こと利益(お金)についてだけ考えると、その利益は相反する事になる。

国家や社会全体にとっては、病気の蔓延というものが、いかなる害悪あるかどうかわからないが、個人としては誠に困った事態である。
これは結核にしろ、AIDSにしろ、普通の伝染病にしろ、すべての病気について言えることで、病気が蔓延し流行する事は医療機関の営利追及を「利する」事になるから、倫理観の著しく低い人物がいて純粋に営利目的に医療施設を運営しており、「儲けるぞ」と決めて手段を選ばないならば、ウィルスや細菌などの病原体を世の中にばらまいて流行を作り出せば、容易に目的を達成する事になる。また何かしらの「悪性の病気」の存在を仄めかして「検査漬け」「治療漬け」にするなんてこともあるかも知れない。

この点が一般の企業の経営と全く異なるところである。
一般の企業というのは自ら創造的に流行を作り出せば、自然に大きな利益を生む事ができる。
最近ではゲーム機械、インターネットビジネス、大昔からあるアパレルなども典型的なそれだが、液晶テレビ、携帯電話、自動車等ありとあらゆるビッグビジネスは大きな流行を創造することで巨大な利益をあげてきた。これらの中には人々を楽しませ、喜ばせ、何らかの慰めを与えてくれるかも知れないが、結構人生全体にとっては有害なものも多い気がする。

このことは誰でも知っている事ではあるが、誰も明快には自覚していないように思える。

一方の医療はどうであろうか。
最近はAIDS、新型のインフルエンザは伝染病ではあるが、これについての恐怖感はテレビでもずいぶん煽られている。

時々は「悪性の病気」についてのテレビでのまことしやかな講釈まであったりして一般の視聴者を恐れさせ、人々を怪しい健康法や健康食品の購買や病院へと向かわせる。
しかし、これなどは実は可愛いものである。

医療ビジネスで最も巨大な利益を上げているのは製薬会社である。
医療機器メーカーである。
日本の医療機器、資材メーカーで毎年1000憶以上の売り上げを上げて増収増益を続けている会社の社長などは、「日本の医療は我々がリードし担う」と堂々とおっしゃっておられたが、唖然としてしまった。

ヨーロッパやアメリカのメガファーマといわれる巨大製薬会社は、日本の誇るトヨタ自動車など歯牙にもかけない程の巨大な会社である。

この業界はある意味で深い深い矛盾に満ちている。

医療機関に対しては、利益追求はダメですよという。
これはよくわかる。
しかしながら一方で、製薬メーカーや医療機器メーカーはれっきとした営利目的の企業である。

お互いに全く相反する目的を持っていて、一般の国民にはこのことはあまり知らされていない。

いくつかの悪性の伝染病、例えばハンセン病・天然痘などは人類の英知と努力によって殆ど克服されたかに見える。
しかしながら、新たに新型のウィルス、新しい伝染病などが流行するようになれば、多くの無辜の人々は犠牲になっても、一部の利益追求の組織やその経営者にとってはとても好都合な事かもしれない。

このような訳で、最近のメタボリックシンドロームについての議論や健康診断促進の推進などは、ある意味で病気を「創造」しているかのように見える。

悪性の病気は、早期発見より予防だ。
メタボリックであろうと何であろうと、例え何かしらの悪性の病気であろうと「元気で長生き」、人々の「楽しい幸福な人生」の創造を目的と決めれば、医療機関はとても気楽であるが、「商売」とか「ビジネス」としては成り立っていかないかも知れない。

だからこそ、医療というのは公的な厚い保護の中で、高い倫理観を持った人々に自由に活動してもらえるようなシステムが必要であるし、医療をビジネスにしている会社や個人には一定の強力な歯止めが要るのではないかと考えている。

AIDSや新型のインフルエンザやその他さまざまな病気の病原体の治療薬を持っている製薬会社が営利追求に走って、人間としての倫理観を失ってしまったら、それらの病気の原因物資を世界中にばらまいているのではないかという、我ながら恐ろしい妄想もしてしまうことがある。

やっぱり医療にビジネスや市場原理はそぐわない。
社会倫理、公徳心の最もいる業種ではないかと思えば、食品業界にも政治にも教育にもいえる。
実のところすべてのありとあらゆる企業に言えることであるが、自覚され洗練されソフィスケートされた倫理観を持った企業は意外に少ないように見える。もしくは「素知らぬ顔」を決め込んでいるのかも知れない。「知らせない」というカタチの虚偽もあるのだ。

ありがとうございました

たくま癒やしの杜クリニック
M田朋久


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