コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 心医者事始2007.11. 7

ふっと思い立って、少年時代に読んだ児童文学全集を読みなおしてみようと、書棚をあせくって本を数冊ペラペラと拾い読みしてみたが、全然面白くない。
多分、自分の感性が、もう児童ではないし、相当に鈍っているのであろう。

ひょいと全集の脇に目をやると、「加賀乙彦」という精神科の医者の書いた「頭医学事始」なる本が手に滑り込んだ。こういう本との出合いは、結構大事にしている。一体誰がこんな本を買ったのだろう。鉛筆やボールペンの書き込みが全くないから、自分ではなさそうだ。

「おれがT大学の医学部を卒業したのは、1953年の春だ。・・・」この書き出しで少しギョっとして、読み始めた。
1953年は私の誕生年だ。
私の大学の最も世話になった同窓の男は、Kと言って、精神科医の筈だ。現在彼は行方不明。全く連絡が取れない。
学生時代から、同年の女子医大生と同棲しているようなケシカラン男であるが、決して女蕩しとか、モテるタイプではなく、本を山のように読み、音楽、特にクラシックのレコードを溢れんばかり所有し、大酒を飲み、グルメで、あらゆることに精通している一風変わった男だったが、面倒見の良い、優しい同級生だった。
けれどもこの友人の好ましからざる、変わった性向のために、伴侶に3度も逃げられた。自分の妻を隅から隅まで管理把握しなければ気が済まないのだ。相方としたらさぞ息苦しいであろう。
「捕まえようとするから逃げられる」
ある意味で単純な理屈だ。
女性に対するそういう性向は、全く私にはないが、不思議に気が合った。

何故か、良く一緒に酒を飲んだり旅行したりして遊んだ。アタマの程度が同じくらいだったか、恐らく多読家という共通点からだろう。
他は体型やら、ファッションやら、女性の好みやら、食事の傾向やら、全く自分とは趣きの違う友人であった。

もう二人の同年生まれの友人も、精神科志望で、私の親しい7〜8人の友人の中で、計3人も精神科医になった。後は泌尿器科医と産婦人科医だが、これは家業か、そうだから自然にその科を選んだだけである。

勉強のできた友人は、みんな内科医になった。何故かワカラナイ。
内科は面白い。医学の王様だそうだ。
しかし世間でいう名医というと、一般に外科医を指すのではないだろうか。「神手」とか「腕が良い」というくらいで、「技術」が売りだから。内科は知識だ。思考力。分析力。学習能力だ。医学知識があればある程良い。
しかしながら、実際の内科医の仕事は、特に開業医の仕事は、結構単純で退屈する。症状も病気も意外に種類は少ない。まれな病気であれば高次医療機関か専門医に紹介しなければならない。専門医の方もこれまた臓器別に分かれ、狭い範囲の領域しか診ないことがあり、結構退屈なのではないだろうか?余計なお世話かも知れないけれど・・・。
こういう交通整理も大事な内科開業医の仕事と言える。

多少、行きがかり上、精神科心療内科みたいな範囲も自然に診るようになって、いろいろ「考える」ことが多くなり、仕事が面白くなった。

心療内科というと、少し解りにくいところもあるかも知れないが、一言で言うと、「心身相関」に着目し、「全人的医療」を目ざした「内科」である。
正直なところ、
外科
精神科
各科専門医、に対して軽いコンプレックスはあるものの、中途半端ながら「総合医」「心療内科医」という存在は、かなり広範囲にわたる知識と経験を要し、一般科のドクターのやや怪訝に見られる印象よりも、はるかに重苦しい。何せココロもカラダも診る。

実のところ、「医療」そのものがもともと重苦しい。病というものが生と死のはざまにあると考えるならば当然であろう。

個人的な目標としては、内科の知識と技術を持った精神科医とかカウンセラーとかセラピストとか、チョットした謂わばスーパードクターをめざしている。欲張りですね。

テレビなんかで「医学モノ」を見ると、やっぱり外科医がカッコイイ。
あの青とか緑色の術衣には少しくコンプレックスを感じる・・・。
ので、自らの幼稚なプライドからか、ワザワザ、ネクタイをしめて、多少紳士ヅラで仕事をする。

しかし白い丸首、立ち襟のドクター着には耐えられない。ドクターサンダルにも耐えられない。やはり、靴とネクタイとワイシャツだ。
これが無ければ、仕事はしたくない。私にとっては先述したけれども、軍人の戦闘服と同じなのだ。

大量の知識と経験の蓄積と、診療能力、治療能力、状況判断力、問題解決能力が「売り」なので、本は読む。
毎日、反省し、研究する。
貴重な、経験の組合せで、熟練、洗練されていくのが楽しいので。
困難な症例の方が嬉しいことも多い。
治したい、楽にしてあげたいという挑戦欲求をかき立ててくれるから・・・。
心の治療は難しい。
だから面白い。難しいことに挑戦する。
これこそプロフェッショナルの真骨頂ではないだろうか・・・。
(チョット熱くなってしまいました)

難しい人間関係
難しい仕事
難しい状況
これは、プロならば喜ばなければならない。・・・と思う。

ありがとうございました。


たくま癒やしの杜クリニック
浜田朋久


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